家庭科における消費者市民教育の意義
-
- 神山 久美
- 東京家政学院大学現代生活学部(非)
書誌事項
- タイトル別名
-
- The meanings of consumer citizenship education in home economics education
説明
[ 研究の背景・目的・方法 ]<BR> 家庭科では、消費者教育の内容が増加しており、平成20年告示小学校・中学校の学習指導要領においては、「消費生活・環境」は、4内容区分の1つに位置付き、内容の取扱いにおいて、他の3内容の学習と関連を図り、総合的に展開するよう配慮すると明記されている。消費者教育の新しい動向を踏まえながら、家庭科において消費者教育を積極的に導入していく必要がある。<BR> 平成20年版国民生活白書は、「消費者市民社会への展望」がテーマであり、消費者市民社会への転換を謳ったものであった。この白書では、消費者市民社会の定義を「個人が、消費者・生活者としての役割において、社会問題、多様性、世界情勢、将来世代の状況などを考慮することによって、社会の発展と改善に積極的に参加する社会」とし、「そこで期待される消費者・生活者像は、自分自身の個人的ニーズと幸福を求めるとしても、消費や社会生活、政策形成過程などを通じて地球、世界、国、地域、そして家族の幸せを実現すべく、社会の主役として活躍する人々」であり、そのような人々を「消費者市民」と示している。このような近年の動向を踏まえて、神山(2010)は、「消費者教育とは、消費者が商品・サービスの購入を中心とする消費プロセス全体に関わる行動を通して、消費者市民としての権利や責任を自覚しながら、生活環境を変革していく能力を開発する教育である」と定義をしている注1)。家庭科において消費者教育を進めるために、消費者市民教育の概念が重要である。<BR> 本研究は、家庭科における消費者市民教育の意義を検討することを目的とする。近年の消費者教育の動向や、先行研究により検討を行った。<BR><BR> [ 結果・考察 ]<BR> 消費者教育では、消費者市民の育成が、最上位の目的になると考えられた。従来から消費者教育の内容を扱ってきた家庭科においても、消費者市民教育を目指すことが必要であり、学習者自身の消費生活から出発し、生活環境を変革していくという方向性が、家庭科で実施する独自性となる。<BR> 家庭科の学習内容において消費者市民教育を行う意義は、次のようにあると考えられた。<BR> 1.家庭科では、学習者に消費生活に関わる基本的な価値観を形成し、消費者市民としての権利と責任の自覚を促し、生活環境を変革する能力の育成や社会参加を目指す学習が可能である。<BR> 2.家庭科のさまざまな学習内容と関連させながら、学習者の消費生活に関わる意思決定プロセスをはじめとした問題解決過程の省察を繰り返し行うことにより、消費者市民として必要な批判的思考力を育むことが可能である。<BR> 3.家庭科では、学習者の身近な消費生活に関わる題材の学習を通して、体系的に消費者市民教育を行うことが可能である。<BR> また、家庭科の学習方法では、実践的・体験的な活動や問題解決的な学習を中心にして、学習者自身の消費生活に関わる内容を扱ってきた。参加・体験型の協同的な学習も行われている。これらは、共生の理念を持ち、行動変容や社会参加を目指す消費者市民教育に関して有効な学習方法であると考えられた。<BR><BR> [ 注 ] <BR> 1)神山久美.(2010).家庭科における消費者教育の指導と評価に関する研究. 東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科博士論文.p.18
収録刊行物
-
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
-
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 53 (0), 19-19, 2010
日本家庭科教育学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205595290752
-
- NII論文ID
- 130006962311
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可