初等教員養成のための被服製作教育の検討

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書誌事項

タイトル別名
  • Cloth making education for elementary school teacher training
  • -Effect on cloth making practice to the sewing skill and interest in the clothing-
  • -被服製作実習による縫製技術習得と被服への関心について-

抄録

【目的】<BR>  日常生活で被服を作ることが少なくなった今,学校教育において被服製作を扱うことは,被服の縫製技術習得や完成の喜びだけでなく,製品の細部に意識や関心を促し,被服の選択眼を養うために必要である。初等・中等教育において,家庭科を担当する教師が被服製作を楽しみ,ミシン縫製に自信をもつことは不可欠であり,教員養成大学においては学生の被服製作指導力育成が重要と考える。本研究では,被服製作指導のあり方を探ることを目的とし,大学生を対象に,被服製作実習によるミシン操作技術,縫製技術ならびに被服への関心への効果について検討した。<BR> 【方法】<BR>  対象は中一種免・高一種免(家庭)指定科目「被服学」を受講した初等教員養成課程家庭選修2年63名とし,調査期間は2008年4月~2010年8月である。本授業は,講義・実習形式180分間であり,「シャツ・ブラウスの製作」実習は後半8回とし,まとめでは製作品タグづくり,ミニファッションショーを実施した。被服製作実習後に,デザイン,材料,品質表示,製作実施記録,自己評価および感想などの製作記録レポートを課した。調査項目は,小・中・高等学校各学校段階における被服製作経験と,本授業前後のミシン操作,シャツ・ブラウス製作実習後の自己評価とした。集計と解析は,EXCELおよびSPSSを用い,単純集計,クロス集計,分散分析を行った。<BR> 【結果】<BR> 1.対象学生の家庭科でミシンを使った学習経験は,小学生時代95.1%,中学生時代55%,高校生時代44%であり,学校段階が上がるとその学習経験は半減した。大学入学後1年次にミシン縫製によるウエストゴム入りパンツを全員が製作した。<BR> 2.ミシン操作では,「上糸かけ」「ボビンへの下糸巻き」「ボビンのミシンへの取付け」「返し縫い」は本授業前95%以上ができると回答し,本授業後は100%となった。「縫い目長さの調節」「曲線縫い」授業前75%・授業後95%,「糸調子の調節」授業前73%・授業後88%ができると回答した。「ボタンホール縫い」は授業前75%以上が未経験であったが,授業後全員ができるようになった。一方,「ミシン針の取り替え」は授業前43%・授業後58%であった。<BR> 3.ミシン操作が「初心者への支援・アドバイスできる」と回答した学生は授業後50%であった。製作過程で台衿,袖付け,ヨークなど形状の異なるパーツの縫合が困難であった学生が多かったことや,ロックミシンによる縫い代裁断時の失敗があったことも要因と考えられる。一方,「今の段階の知識と技術では十分な指導ができない。努力をしていきたい。」と将来の指導する立場を意識した記述もみられた。<BR> 4.デザインを自由選択にしたことについて,「本のデザインどおりでなく自分で工夫するのも良い」「丁度良いサイズに仕上がった」「皆同じデザインの人はなくそれぞれ個性が出て良かった」「リボンをつけたりボタンの色を変えたり色々工夫して自分好みのシャツを作ることができた」など好評価であった。布選択では,「色柄で選んだら収縮率が高い布であった」「涼しく着られる麻を選んだら地直しがあった」「薄地は縫いにくい」「生地が厚く涼しい時しか着られない」など,素材選択の留意点に繋がる記述があった。説明書を読んで図解や手順を理解することや既製衣料品のタグ表示を見て購入することを記載した学生はわずかであった。<BR> 5.作品の出来映え(5段階評価)は4以上の好評価が68%,作品の満足度は4以上の好評価が83%であり,次の製作意欲について記述が多かった。大学入学前はミシン縫製による被服製作実習経験に個人差が多いが,大学入学後2作品を製作するによってミシン操作技術の差は少なくなった。作品を完成することにより,出来映え自己評価が低い場合も,被服製作の苦手意識が解消され自信をもつ効果は大であるといえる。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595446528
  • NII論文ID
    130006962497
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.5.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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