児童・生徒の「生活技術力」「生活実践力」はどう変わったのか

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タイトル別名
  • How has the Students' home life technological skill changed?
  • Based on the results of surveys conducted on students in Tohoku district
  • 東北地方における調査をもとに

抄録

【目的】生活様式の選好、生活の中にある「もの」との付き合い方をはじめ、暮らしを取り巻く状況は日々変化を遂げている。また、児童・生徒の生活体験不足や、生活のために必要な技術・技能の定着に関する課題が長きにわたり提起されてきた。家庭科教育においても、学校で学んだ事柄を日常生活に生かすことができる「生活技術能力」「生活実践力」の育成が課題の一つといえる。そこで本研究では、「家庭科」「技術・家庭科」における「生活技術能力」が、四半世紀前の児童・生徒と比較して「日常生活で実践不足」で「低下している」のか、あるいはそうではないのか、を明らかにする。 本報告はその端緒として、過去の児童・生徒の家庭生活及び生活実践状況と比較するため、日本家庭科教育学会東北支部会が1985(昭和60)年に東北6県の小・中・高等学校で実施した「家庭生活に関する認識調査(以下、認識調査と記す)」結果との比較を行う。85年当時、既に「基礎的な生活自立能力のレベルダウン」とその事態への対応の必要性が指摘されている(壁谷沢 1985)。それから約25年経過した現在において、どのような点で児童・生徒の「生活実践力」「生活技術能力」に変化が見られるか/見られないか、を検証することは重要と言える。また、過去と現在の比較という「時間軸」のほかに、現状における「時間軸」、すなわち学校段階や学年の違いによる生活実践状況についても注目する。例えば、2001(平成13)年に日本家庭科教育学会が実施した「家庭生活についての(全国)調査」では、学年進行に伴い、日常生活で行う家事行動が増えるもの(季節に合う服装を自分で決める、洗濯機で衣服の洗濯をする)、あまり変化しないもの(包丁で食べ物を切る)、減少するもの(洗濯ものをたたむ、家族の夕食を作る)という結果が表れた。そのほか、85年実施の「認識調査」では、性差によって生活実践状況が異なることも指摘されており、この点についても検討をする。 【方法】東北6県の小・中・高校生を対象とする「家庭生活に関する認識調査」(日本家庭科教育学会東北支部会1985)結果を用いる。調査方法は、質問紙による集団自記式であり、有効回答数は小学校4年生555人、小学校6年生534人、中学校2年生570人、高校2年生594人、計2,253人だった。 この「認識調査(1985)」の質問紙を抜粋し、85年の調査方法と同様の方法で質問紙調査を実施した。調査対象は、「認識調査」において岩手県で調査対象校とされた小・中・高等学校にほぼ準じる学校、各1校から回答を得た(小学校4年生104人、小学校6年生109人、中学校2年生152人、高校2年生154人、計519人)。調査時期は2009(平成21)年1月末~2月上旬である。 【結果】児童・生徒の家庭の状況について見ると、家族形態は核家族が最も多く、同居家族数は「4人」が最も多いという点は85年の「認識調査」と同じだが、その割合は低下している(41.5%→39.5%)。85年の「認識調査」では、「夕食時にだいたい(家族が)そろう」という回答が46.8%(全体平均)と半数に近かったが、2009年調査では、36.8%と10ポイントも低下した。 12品目を提示し、「作ることができる料理」を質問したところ、85年の「認識調査」では、ほぼ学年進行に伴い、「作ることができる」割合が高まるという結果だったが、09年調査では、家庭科でちょうど学習した/し終わった時期に回答率が高まる傾向だった(小6:みそ汁、中2:ハンバーグ等)。ところが、学年進行と「作ることができる」ことは必ずしも比例せず、また85年調査と比べて、「作ることができる」という回答率が低下傾向にある。 次に、「洗濯」の実施状況をみると、01年の調査では学年進行で上昇したが、09年調査では学年進行に伴って実施率は高まらなかった。また、85年の「認識調査」で学年進行に伴い低下したとされる「洗濯ものをたたむ」については、09年調査でも小6をピークに低下していく傾向が見られた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595510912
  • NII論文ID
    130006962566
  • DOI
    10.11549/jhee.52.0.13.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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