中学校技術・家庭科家庭分野における食生活の実践力を高める指導方法の工夫

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • The study on teaching method to enhance the practical power for diet life of home economics in junior high school
  • -The effect of the teaching in consideration for learning continuity -
  • -学習の継続性を考慮した指導の効果-

抄録

【目的】家庭科,技術・家庭科の家庭分野の学習は,一人ひとりの生徒の生活実践に生かされてこそ意味をもつものであり,児童・生徒の発達段階に応じて, 実践力を身に付けさせるための継続的な指導を仕組んでいくことが必要である。本研究では,食生活を営む実践力を高めるための指導の工夫として, 小・中学校の学習の連続性を考慮するとともに,その後の調理に関する題材展開において, 生徒に学習したことを振り返らせる場を設け, 授業後に継続して課題を追求させた。このような生徒の学習の継続性を考慮した2年間の指導の効果を生徒の自己評価等によって検証することを目的とした。<BR>【方法】2009年度と2010年度の2年間にわたり,小学校との接点を考えて「わたしたちの食品の選択と調理‐食事づくりに挑戦しよう‐」(全7時間)の題材を構成し授業を行った。2009年度より家庭分野の授業教室に電子黒板と書画カメラを常設して授業を行い,両年度とも実習の振り返りの場面では調理の際に撮影した画像(生徒の活動の様子)をそれらの機器を用いて順に提示した。また, 食品の栄養的な特徴や調理上の性質,調理方法を理解させる場面ではパワーポイントを用いた。さらに,「夏休み中,家庭で5回以上調理を行い,レポートを提出する」という課題を与え,題材開始前,題材終了後,夏期休業直後の3時点で同じ内容の自己評価表(観点:【知識・理解】【創意・工夫】【技能・表現】【関心・意欲・態度】【料理の評価】【自己の成長】)を記入させた。それらの結果等に基づいて, 指導の効果を分析, 考察した。2010年度は,年度当初のガイダンス的な内容の授業で,小学校の家庭科学習に基づいてイメージマップを作成させ,持参させた小学校の教科書と中学校の教科書を使ってガイダンスを進めた。夏季休業中の課題は2009年度の実践の課題を踏まえて,調理後の振り返りで次の課題を設定し改善策を考え実践させるという問題解決的な学習を取り入れたワークシートに改善した。また,「魚,肉,野菜の調理を1回以上行う」という条件から「魚,肉,弁当の調理を1回以上行う」に変更し,課題提示の際は,前年度の先輩が提出した課題の実物や, 弁当箱,弁当に使う道具等の具体物を提示するとともに,弁当の例(画像)を電子黒板で提示して課題の説明をより丁寧に行った。<BR>【結果】3時点での生徒の自己評価表の得点を比較すると,題材開始前はすべての項目において2009年度よりも2010年度の方が高くなった。このことは,2009年度までの実践を踏まえて指導者自身が見通しをもってガイダンス的な内容の授業を行ったことにより,生徒も小学校家庭科の学習を振り返りながら中学校での学習に見通しを立てることができたためと考えられる。題材終了後の得点は,両年度ともほぼ同じになり,夏季休業直後には再び2010年度の方が全体的に高くなった。また,夏季休業中に生徒が行った調理回数は,2009年度は5回以上が98.1(うち6回以上4.7)%,2010年度は99(うち6回以上24.0)%,単品ではない献立をつくったものは,2009年度は39.3%,2010年度は67.6%であった。これらのことから,題材の学習によって両年度ともほぼ同じレベルの自己評価になったといえるが,2010年度は実践の課題提示の改善に取り組んだことや,ワークシートの工夫,前年度の成果物の提示などによって,生徒の学習内容や課題に対する理解が深まり,学習意欲及び学習効果が高まったものと考えられる。今後の実践に向けて, 調理回数と記述項目の吟味・精選, 及び効果的に問題解決的な学習を進めるための事前指導を工夫することが課題である。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595561728
  • NII論文ID
    130006962634
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.84.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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