地域連携授業と家庭科の役割

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タイトル別名
  • Regional Collaboration and Role of Home Economics
  • ー学年行事「うどん作り教室」の取り組みを通してー

抄録

<BR>【問題の所在と研究目的】<BR> 家庭科の授業時数の減少に伴い、実習の回数が少なくなるなど様々な困難が生じている。それを補うために、「総合的な学習」の時間や学校・学年行事を家庭科の学びと関連あるものを提案したり、関連づけて取り込んだりする方法がある。<BR> 本研究は、練馬区立A中学校の学年行事(「総合的な学習の時間」に実施)として、地域と連携して行われた授業「うどん作り教室」の成果と課題を探ることを通し、家庭科の役割を考察することである。<BR>【方法】 <BR> 下記の①~④を聞き取りや参観する方法で調査した。<BR>①「うどん作り教室」の活動の実際を参観する。<BR>②学校と地域を連携した活動をどのようにして作り上げたかを、青少年育成地区委員会会長、学校長、栄養教諭から聞き取る。<BR>③生徒の夏休みの課題「食育新聞」を分析し、「うどん作り」から何を学んでいるかを調べる。<BR>④行政の青少年育成委員会担当者から地域と学校連携の活動状況について聞き取る。<BR>【うどん作り教室の実際】<BR> A校の周りは農地も残る地域である。事前に、連携する農家で小麦の刈り取りを行い、学校近くの水車の残る製粉所で製粉してもらった小麦粉をうどんの材料として使用した。<BR> A校での「うどん作り教室」は、新指導要領試行の平成12年から毎年1年生全員(H23年度99名)を対象に開催している。育成地区委員会の「うどん作り教室」実行委員会の実行委員(約60名)は、育成委員の他、地域の小中学校の保護者から構成される。ゲストチィーチャーという立場であるが、準備段階から、実習指導、後片づけなど、企画・運営のすべてをおこなっている。使用する道具類は、どれも育成会所有の本格的な麺打ち専用の道具である。<BR>【食育新聞の分析結果】<BR> 「作り方」を記事にした生徒が一番多く50名(86名中)であった。記事中の言葉を抽出して数えた結果、「おいしかった」49名、「大変だった」「疲れた」「難しかった」「面倒だった」などと記述した生徒は47名いた。一方「大変だった」けれど「楽しかった」と書いた生徒が14名、「また機会があればやりたい」「家庭でやりたい」17名いた。「食べものの大切さに気づいた」「地域の人に支えられている」こと等の記述もあった。実習をとおして学んだことは多い。<BR> しかし、地域の人達が、なぜ、自分たちで刈り取った小麦から地域の郷土料理・土支田うどんの作り方を教えてくれたのか、伝わっているかは不明である。「土支田うどん」と言う言葉を書いた生徒は2名のみだった。「郷土料理」という言葉も出てこない。小麦の色は灰色をしていた。色のことを書いた生徒は1名であるが、なぜかは書かれていない。<BR>【考察】<BR> 家庭科の授業で実習に充分時間がとれない現状で、多くの青少年育成会や地域の方々が本格的道具を持参して「うどん作り教室」は学びの土台となる体験をさせてもらえることであり、地域との連携の効果は大きい。しかし、それはあくまで「体験した」にとどまる。その体験を基に、地域の食文化、郷土料理などについての学びに発展させられる。小麦の調理上の性質や、小麦の生産から日本の食料事情についての学びにも発展させることが出来る。<BR> 地域の方と連携した授業を、上記のような学びに発展させることができるのは家庭科の教師であり、家庭科の役割であると考える。その役割が果たせてはじめて「地域連携」の価値が生きてくると考える。<BR> A校の家庭科担当教諭は非常勤講師であり、「うどん作り教室」には全く参加・参観していない。家庭科の授業とは関連させていない。専任の家庭科教諭が1校1名は必要である。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595579008
  • NII論文ID
    130004619225
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.100.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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