中学校「技術・家庭」における食生活指導の検討

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書誌事項

タイトル別名
  • Some Research on the Teaching Methods Concerning the Food Life in the Home Economics Course of the Junior High School
  • Learning Effect of Introducing the"3:1:2 Meal Box Magic"into the Food Life Education
  • 「3・1・2弁当箱法」導入の学習効果

抄録

<目的>  中学校家庭科の「食生活と自立」学習では,日常食の献立作成や調理などに関する実践的・体験的な学習活動を通して、中学生の栄養と調理についての基礎的・基本的な知識及び技術を習得することが求められている。献立が立てられるようになるためには,栄養素の種類と働き,栄養所要量,食品群別摂取量のめやす等を理解しなければならない。しかし,中学生にとって,食品に含まれる栄養素を把握し,1食あるいは1日に何をどれだけ摂取するとよいかを理解するのは難しく,健康によい食習慣が身に付いていない実態が見受けられる。  著者等は足立己幸,針谷順子による「3・1・2弁当箱ダイエット法」(以下,「3・1・2弁当箱法」)の,1食分の食事内容と概量を目で見て把握できる点に着目し,教材化を試みてきた。  本研究では,食生活学習全13時間のうち,「3・1・2弁当箱法」に関する授業を4時間実施し,食生活に関する知識や意識にどのような変容をもたらすか,学習前後の調査から明らかにするものである。 <方法> (1)調査対象:山形大学附属中学校第1学年4クラス,男子:83名,女子:77名,計160名 (2)調査時期:学習前調査;2010年7月,学習後調査;2010年10月 (3)調査方法:食生活学習の1時間目と最終時間に同一内容の質問紙調査を行った。質問項目は食生活の知識に関するもの6項目と食生活の意識に関するもの4項目であり,全て自由記述である。得られた回答はKJ法によりカテゴリー化し,学習前後での比較検討を行った。 <結果> 1.食生活の知識に関する内容の変化  「献立を立てるときの条件」を問う質問に対し,得られた回答を「バランス」,「量」,「おいしさ」,「健康への配慮」,「作り方」,「その他」,「無回答」のカテゴリーに分類した。なお,回答は記述内容ごとにカウントし,延べ人数で表した。  学習前では,「バランス」に言及した者が91.1%,「健康への配慮」が17.1%,「作り方」12.7%であった。学習後は「バランス」に言及した者が161.0%,「おいしさ」52.6%,「健康への配慮」32.5%,「作り方」31.2%となった。学習後に各自がより多くの条件に言及しており,献立作成について様々な視点に気づくようになったと推察される。  「食事でバランスが良いとはどういうことを言うのか」の問いに対する回答は,「食品数」が学習前86.1%から学習後64.3%へ,「栄養素」が学習前 16.5%から学習後44.2%へ,「主食・主菜・副菜」が学習前11.4%から学習後 61.0%へ,「量」が学習前35.4%から学習後 45.5%へと変化した。学習前は「食品数」のみが高率で,他のカテゴリーが少なかったのに対し,学習後はいずれのカテゴリーも大幅に増え,バランスについて様々な視点から考えることができるようになっていることが明らかとなった。また,「3・1・2弁当箱法」の特徴とも言える「主食・主菜・副菜」に関する回答の増加率が最も大きく,バランスを考える上で主食・主菜・副菜の比率が重要であることを理解した者が増えたと言える。  さらに、食生活の知識をもとに,市販の弁当を評価(良いところ、悪いところ,改善点)させたところ,学習後には栄養バランスに言及する者が増え,既製の弁当を栄養面から客観的に評価できる力の育成にもつながっていることが示唆された。 2.食生活の意識に関する内容の変化  「食事を食べるときに気を付けていること」では,学習後に「バランス」に言及した者が2倍以上に増加し,「食べ方」,「マナー」,「衛生・安全面」等の回答率が減少した。「食事を作るときに大切にしたいこと」でも,「バランス」と「おいしさ」の回答率が増加していた。このことから,食生活学習全体を通して,知識だけでなく意識としても食事の栄養バランスに着目する者が増えたと推察される。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595581952
  • NII論文ID
    130006962664
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.90.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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