中高一貫校における家庭科カリキュラムに関する調査研究

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タイトル別名
  • Reseach on home economics curriculum in integrated middle and high school

抄録

研究目的:中学・高校の家庭科教育は、学習内容の重複があり、同じことを何度もという印象を持たれやすい。実際に、中学生および高校生の発達段階の違いを考慮した連続性のあるカリキュラムとはなっていない点が問題であり、学習指導要領上においても、学習内容の重複については充分に克服されていない点が課題である。  本研究は、最終的には、学習者の発達段階を考慮した連続性のある中高家庭科のカリキュラムの提案を目指すものである。そこで、まず本報告では、連続したカリキュラム設定が可能と思われる中高一貫校において、実際に家庭科のカリキュラムがどのように構成されているのか、とくに食生活、衣生活、保育に関する学習では、どのような実習や題材を設定して関連をはかっているのかについて、実態を明らかにすることを目的とした。<BR>   研究方法:家庭科担当教師に対する記述式の質問紙調査による。<BR> 調査対象:男子校、女子校、男女共学校の別を考慮して、東京、千葉、埼玉県下の中高一貫校より20校を抽出し、家庭科担当者に質問紙への回答を依頼した。<BR> 調査時期:2010年5月~8月 調査内容:年間指導計画、および衣生活、食生活、保育の学習内容、実習題材などについて、設問を設定した。<BR> 研究結果: 20校のカリキュラムは、それぞれの学校・生徒の実態や教育方針により多様であった。そのため、回答を統計的に処理して示すのではなく、各校のカリキュラム作成上で依拠する考え方を、担当の家庭科教師の想いを含めて個々の調査紙より読み解き、全体の傾向を見るということを試みた。<BR> 家庭科は生活を対象としており、必ずしも衣食住の分野に分けてカリキュラムを作成する必要はないが、本研究で用いた質問紙においては、学習内容の重複が問題とされる食生活分野、時間数の削減にともない製作実習の実施が困難とされている衣生活分野、発達段階を考慮する必要があると思われる保育分野に分けてその実態を把握した。その結果、食生活分野においては、いずれの学校も調理実習が精力的に実施されていることが分かった。その内容は、基礎から応用へと段階を追って、技能および知識が身につくように工夫されていた。また、中学・高校と実習題材が重複しないように配慮している学校が多かった。衣生活分野では、被服製作を行っていないまたは回答が見られない学校が1/3あった。施設設備の制約のある中でも、手を動かすことを重視して手縫いの実習を工夫している学校がみられた。保育分野では、中高一貫であることを意識した学習内容を設定している学校は、全体の1/3にとどまった。対象校のうち、高校からの入学生徒が大半を占める学校もあることからすれば、中高一貫を意識してカリキュラムを考えることは、必然ではない場合もあると思われるが、食・衣・保育の分野によって、工夫の方途が異なることは興味深い。また、2時間連続の授業設定になっていない、施設設備が不十分であるなどの家庭科の教育環境の問題も改めて明らかになった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595583360
  • NII論文ID
    130006962665
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.88.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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