清潔で気持ちのよい着方を考える小学校家庭科授業

書誌事項

タイトル別名
  • The development of a class to think of ways to wear clothes in a healthy,clean and comfortable manner in the home economics in the elementary school

説明

【目的】<BR> 小学校家庭科衣生活領域の衣服の着用と手入れに関しては,「実習などを通して,目的に応じた快適な着方を考え工夫する能力を育てる」ことがねらいとされている。ここでの快適とは,「健康によく清潔で気持ちがよいこと」とされている。このことを考えるためには,着用する衣服の素材の性質に関して,1つの性質だけではなく,さまざまな性質を組み合わせなければならない。衣服の性質の一面だけしか理解していない場合,その性質だけでは快適な着方を判断することができないため,清潔で気持ちのよい着方をすることはできない。そこで,小単元「清潔で気持ちのよい着方を考えよう!」を設定し,自分で目的に合った快適な着方を考えるために,衣服素材の性質に関する知識を獲得させる授業を考えた。小単元の到達目標は,「私たちが,どんな衣服をどのように着るかによって快適性は異なる。」「衣服にはいろいろな性質があり,布が水を吸う性質を吸水性という。」「布には,水や汗をよく吸水する布と吸水しにくい布がある。」「水や汗をよく吸水する衣服は乾くのが遅く,吸水しない衣服は乾くのが速い。」「衣服の吸水性や乾燥性は,着心地に影響する。」「衣服の吸水性や乾燥性は,洗濯における濡れやすさ,乾きやすさに影響する。」「自分で目的に合った快適な着方を考えるためには,衣服素材の性質を理解することが必要である。」とした。この授業では児童が実験をすることを想定して,衣服の吸水性ならびに乾燥性を調べるための基礎実験を行った。今回は,その実験結果を併せて報告する。<BR>【方法】<BR> 乾燥試験の基礎実験では,吸水実験用白布(関西衣生活)を用いた。平織(綿ブロード40番),斜文織(綿デニム),朱子織(綿朱子),編物(綿ニット),麻,絹,毛,ナイロン6(タフタ),ポリエステル(タフタ,モスリン),ビニロン,アクリル,ポリウレタン,混紡糸(P35/C65)を用いた。試料布の厚さ測定と糸密度測定を行った。実験はまず,乾燥した秤量びんに試験片(10×10cm)を入れて重量〈Wo(g)〉を測り,試験片を水に浸して十分に吸水させてから脱水機(HITACHI PS-T36J2)で1分間脱水した。次に脱水した試料布をもとの秤量びんに入れ重量〈Wt(g)〉を測り,試験片を洗濯ばさみでつるして,室内(20.5℃,60%)で自然乾燥させ,1分後に外して秤量びんに入れて電子天びん(研精(株) FX200i)で重量〈Wn(g)〉を測った。さらに,5分おきに重量測定を繰り返し,変化がなくなるまで行った。乾燥率(%)=Wt-Wn/Wt-Wo×100を算出した。織物編物,糸の種類,繊維の種類に分類し,比較した。授業では,児童の発達段階に合わせた方法で実験する。<BR>【結果】<BR> 時間(min)に対して,乾燥率(%)をプロットすると,いずれの布も時間の経過とともに乾燥率は上昇し,その後平衡になった。乾燥時間が長かったのは,綿,麻などの親水性繊維であった。親水性繊維は,水や汗をよく吸水した。乾燥時間が短かったのは,ナイロン6(タフタ),ポリエステル(タフタ)などの疎水性繊維であった。また,素材が綿の場合,厚地のもの(ニット:0.80mm,綿デニム:0.61mm)ほど,乾燥時間が長くなった。薄地のもの(綿ブロード40番:0.30mm)に比べ,2倍の時間がかかった。乾燥速度には環境温度・湿度の他に,布の厚さ・糸密度の構造的な要因が関係していることが分かった。これらの実験結果を踏まえて授業では,試料布は教科書で取り上げられている綿(綿ブロード,綿ニット),ポリエステルを中心に,日常着の例として綿とポリエステルの混紡も扱う。快適な着方の必要性を理解し,着方に関する多面的なものの見方や考え方を養う授業としたい。

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595585152
  • NII論文ID
    130006962667
  • DOI
    10.11549/jhee.54.0.89.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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