大学生が防災意識を高める要因

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  • The Factors to which College Students raise Consciousness of Disaster Prevention

抄録

1. 研究目的 2011年3月11日に三陸沖を震源とするマグニチュード9.0の東日本大地震が起こった。巨大な津波によって,石巻市立大川小学校の全校児童の約7割が亡くなる一方,岩手県釜石市では,3000人近い小中学生のほとんどが無事に避難した。背景には,三陸地方の言い伝え「津波てんでんこ」(自分の責任で早く高台に逃げろの意味)に基づいた防災教育があると言われている。家庭科における防災教育では鳥井ら,佐々木らなどの先行研究があり、これらは主に「住生活」における授業構想や指導内容の提案を扱っていた。ここでは家庭科教育及び環境教育などによって育まれる要素を考え、これらが「防災対応力」とどのように関わり、要因となるのかを明らかにすることにした。  2. 研究方法  対象者は国立Y大学の共通教育「生活科学」(大学1年用)の受講者233名であり、授業中に質問紙を配布して、回収した。調査時期は2011年7月であり、統計分析はSPSS(ver.12)及びAMOS(ver.18)を用いた。  3. 結果および考察    (1) 防災意識に関わると考えた要素について因子分析を行った。ネーミングは「家族力」、「規範意識」、「自然体験」、学習観として(=「学習の工夫志向」「学習環境志向」「学習量志向」)、「環境問題の理解意欲」、自然観・科学観として(=「人知を超えた自然観」「寛大な自然観」「未来を築く科学観」)、「節電意識」、災害心理として(=「用意周到志向」「非同調志向」)、防災対応力として(=「家庭内防災対応力」「社会的防災対応力」)とした。下位尺度得点(平均値)が高い項目数は女子>男子であった。    (2) 「防災対応力」を高める要因について   「防災対応力」は「家庭内防災対応力」、「社会的災害抑止・軽減力」の2因子から構成されていた。これらが他の因子と,どのように関わるか、「家族力」を基盤にした仮説モデルをAMOSによって分析した。   (2)-1-1「家庭内防災対応力」を高めるモデル  「家庭内防災対応力」は「防災についての家族の役割を決めようと思う」などから構成されている。これを高める仮説モデルについて直接効果(標準化)で見ると、「家族力」は「家庭内防災対応力」を高める直接の要因とはならなかったが、「学習の工夫」「規範意識」「自然体験」を高め、これらのいくつかが「環境問題の理解意欲」「節電意識」を高めることを通して、目的とする「家庭内防災対応力」を高めていた。このモデルはカイ二乗値が有意でないこと,GFI=0.987,AGFI=0.961,CFI=0.998が1に近いこと,RMSEA=0.021で0.05以下であることから妥当性があった。   (2)-1-2 「家族力」の差を媒介する要因   「家庭内防災対応力」における「家族力」の差を媒介する要因を明らかにするために2要因の分散分析を行った。交互作用が有意だったものについて述べると、災害心理因子「非同調志向」低位群では「家族力」低→高による「家庭内防災対応力」の平均値は(3.107→3.059)でほとんど、「家族力」効果はないが、「非同調志向」高位群でのそれは(2.908→3.467)であり、「家族力」によって「家庭内防災対応力」が著しく高まった。  (2)-2「社会的災害抑止・軽減力」の要因  この因子は「社会貢献したいと思う」などから構成されている。「社会的災害抑止・軽減力」を高める項目として(2)-1に加えて、新たに「人智を超えた自然観」「用意周到志向」が加わった。この仮説モデルはカイ二乗値が有意でないこと,GFI=0.987,AGFI=0.961,CFI=1.000,RMSEA=0.000であることから妥当性があった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595719680
  • NII論文ID
    130005021480
  • DOI
    10.11549/jhee.55.0.31.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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