地域教材(紅型)を生かした高等学校家庭科教育の授業実践研究

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書誌事項

タイトル別名
  • Teaching practice of home economics in a high school in Okinawa utilizing teaching material of BIN-GATA(kind of stencil dyeing)
  • part 2
  • 実践事例その2

抄録

【目的】高等学校学習指導要領では、「衣食住にかかわる生活文化の背景について理解させるとともに、生活文化に関心をもたせ、それを伝承し創造しようとする意欲をもたせる。」と示されている(文部省 2000)。 土地の風土や生活そして人間の暮らしの中から文化は生まれる。文化は美への惜しみない追求である。沖縄は独自の染織文化を創り上げ、染織の美学を実現してきた(富士栄 2006)。 沖縄県には数多くの染織工芸品がある。その中で、紅型は1984年に国の伝統的工芸品として経済産業大臣の指定を受け、県工芸産業の一翼を担う重要な位置を占めている。紅型を地域教材として取り上げる授業展開が考えられる。 1997~2007年の地域教材として紅型を生かした授業実践について『日本家庭科教育学会誌』、『家庭科研究』で調べた結果、実践例は見られなかった。また、『家庭科の授業-実習ガイドブック-』(家庭科教育研究者連盟 2006)において、“紅型風”型染めでコースターを作成する授業実践の紹介があった。そこでは、紅型で用いる顔料とは異なるステンシル用絵の具を使っている。 生活の中で使って生かすのが工芸である。今、美術品になりつつある紅型を生活の中に取り入れることで身近に感じ、生活を楽しいものにしたい。  本研究では、家庭科教育の中で地域教材を生かした授業実践を試み、紅型を地域教材として活用する。家庭科教育において、紅型を地域教材として取り上げることで、沖縄の文化に誇りをもたせ、紅型を身近に感じ、生活文化を伝承し創造しようとする意欲をもたせ、実践へとつなげる。 以上のことを踏まえ、地域教材(紅型)を生かした授業実践の教育的効果を生徒の授業後の感想及び授業前後のSD法にあらわれるイメージの変化として捉えることを目的とする。 【方法】地域教材として琉球紅型染を取り入れた授業実践を以下のように行った。 1.知る体験(琉球大学教育学部教育実践総合センター紀要第15号2008年3月 地域教材(紅型)を生かした高等学校家庭科教育の授業実践研究-実践事例その1-) 2.つくる体験 地域教材(紅型)を生かした高等学校家庭科教育の授業実践研究-実践事例その2- 場所:西原高等学校一般選択家庭科「生活教養」3年生1~8組(20名) 日時:2007年12月4日(火)18日(火)25日(火)5・6校時 計3回 指導目標:沖縄の伝統工芸に紅型がある。紅型のデザインに西原高校が所在する西原町の町花木である「さわふじ」を取り上げた。「知る体験」を通した学習を深めることで、沖縄の文化に誇りをもたせ、それを伝承し創造しようとする意欲をもたせる。さらに、家庭科教育における「つくる体験」へとつなげることを目標としている。 指導計画:(1)紅型の文化的背景(6時間) (2)さわふじをデザインした紅型-実習を通して(6時間) (3)ボトル入れ・ティッシュボックスカバー製作(2時間) (全14時間)…本研究7~14/14 【結果】SD法による分析、生徒のつぶやき、授業後の感想等から、地域教材を生かした授業実践に於て、「知る体験」と「つくる体験」の授業を行うことが、生徒間や生徒と教師間との心理的距離を親密にさせることがわかる。このことは、授業を理解する上で,教育的効果に影響するといえる。「つくる体験」の授業で、紅型とさわふじについて体験的に学習し、その美しさや知識・理解が深まったことから、より自分のこととして身近に感じられるようになった。紅型を「知る体験」と「つくる体験」から、沖縄の文化に誇りをもち、紅型を伝承し創造しようとする意欲をもてたとみられ,生活の中で紅型染を楽しむことを生徒たちへ伝えられた。今後は,教材としてオリジナルの紅型染シャツ(かりゆしウェア)を取り上げた授業実践を予定している。紅型の特徴を崩すことなく、生徒たちの若く膨らむ感性で、沖縄県の伝統工芸である紅型を暮らしの中で使える生活スタイルを考えている。 尚、本研究は、科学研究費補助金(2005~2007年度、課題番号175005009、研究代表者:富士栄登美子)を受けていることを申し添えます。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595728128
  • NII論文ID
    130006962832
  • DOI
    10.11549/jhee.51.0.40.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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