協働学習によるデジタルポートフォリオの活用

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Utilization of Digital Portfolio in Collaborative learning
  • ー家族への食事作りに向けてー
  • - Students' Home Cooking for their Families -

抄録

目的<BR> 家庭科におけるICT機器の活用について有友は、調理器具の名称や扱い方を学習するための自作教材や電子黒板上での字幕を挿入した動画の活用の有用性を報告している(2007,2011)。また、調理実習において、学びのツールの一つとしてレシピカードや調理場面の動画を組み込んだデジタルポートフォリオをタブレットPCで活用することにより、調理に関する思考力が高まり、体験を通して学んだ知識や技能に対する理解が深まったことを報告している(2012)。そこで、デジタルポートフォリオを活用した調理実習において、思考力や判断力の向上を促し、学習したことを生活に生かそうとする力を身につけることを目指し、協働的な学びを取り入れた授業をデザインした。従前の取り組みに、協働学習としてタブレットPCの授業支援アプリを活用した生徒同士の意見交換とその内容を加えたポイントムービー作成を組み込んだ実践を行った。<BR>方法<BR> 豚肉の生姜焼き、鮭のムニエル、ハンバーグステーキから主菜一品を選択させ、家族への食事作りに向けて学習を展開した。学習の流れは、(1)グループごとの実習、(2)意見交換とポイントムービー作成、(3)主菜一品を1人で作る実習、(4)レシピカードの作成、(5)家族への食事作りとした。生徒が1人1台タブレットPCを用い、学びのツールとしてデジタルポートフォリオを活用させた。ポイントムービーの構成は、目標・理由・目標を達成するためのポイント・友達からの質問・質問の答えとし、完成したポイントムービーはデジタルポートフォリオに組み込んで実習で活用したり、レシピカード作成の際に活用したりした。生徒が家庭で調理をする際の課題である調理手順と調理技能に着目し、ポイントムービーの内容や家族への食事作り後の評価、質問紙調査の結果から、協働学習が及ぼした影響を検討した。<BR>結果<BR> 学校で行った実習と家族への食事作りについて、タブレットPCを活用した協働学習を行った場合とそうではない場合の自己評価(5段階評価)の平均値を比較した。調理手順について、協働学習を行った場合はグループ[3.62]、1人[3.42]、家族[4.14]、協働学習を行っていない場合はグループ[3.83]、1人[3.94]、家族[3.83]という結果が得られた。協働学習を行っていない場合では自己評価の値にほぼ変化がみられなかったが、協働学習を行った場合では、家庭での家族への食事作りでの自己評価が高かった。学習を通して生徒が課題意識を持って主体的に思考・判断することにより、家庭での家族への食事作りを行うまでに調理手順が整理されたことが、自己評価の高まりにつながったと言えるだろう。ポイントムービーの作成においても、実習での経験や学習支援アプリを活用した意見交換での友達からの質問やその答えをもとに、調理の流れを意識して思考・判断しながら編集に取り組む様子がうかがえた。調理技能について、協働学習を行った場合はグループ[3.35]、1人[3.58]、家族[3.59]、協働学習を行っていない場合はグループ[3.75]、1人[3.69]、家族[4.18]という結果が得られた。協働学習を行った場合の自己評価の理由から、調理のポイントや注意点を意識して技術の習得を目指す様子がみられたが、自己評価の平均値に変化はほとんどみられなかった。協働学習を取り入れたことで、自分とは異なる視点から調理のポイントや注意点について検討でき、繰り返しによる慣れを技能の習得と自己評価せず、課題意識を持って一連の学習に取り組めたことが推察できる。<BR> デジタルポートフォリオを活用した協働的な学びを通して思考力や判断力を高めることで、家庭での家族への食事作りに向けて効率良い調理の進め方や調理技能の上達を目指した見方や考え方を促すことができ、学習したことを生活に生かす力の育成につなげることができた。<br>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595797888
  • NII論文ID
    130005485019
  • DOI
    10.11549/jhee.58.0_29
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ