ホームプロジェクト学習における高校生のプレゼンテーション能力向上プロセス

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タイトル別名
  • The Process of Home Project Study for Presentation Skills among HIgh School Students

抄録

【目的】<br>論点整理において学習指導要領改訂の方向性として「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」の3つの柱が示された(文部科学省2015)。問題発見・解決の手法や主体的に考える力を身に付けるためには学習プロセスを捉え、学習評価に反映させることが有効である。そこで、家庭基礎におけるホームプロジェクト学習を通じて、ポスター発表における相互評価および自己評価から高校生のプレゼンテーション能力を把握し、問題解決学習によるプレゼンテーション能力の向上プロセスを探索的に明らかにすることを目的とする。<br>【方法】<br>対象は首都圏にあるスーパーサイエンスハイスクール(以下、SSH)指定校の普通科高校1学年8学級323名である。1学年の2学級がSSHカリキュラム(以下、SSHクラス)で、6学級は通常のカリキュラム(以下、非SSHクラス)で学んでいる。異なるカリキュラムの中で、家庭基礎は1学年8学級が一人の教諭により同一の内容を学ぶ唯一の機会となっている。2016年度の家庭基礎の夏季休業課題として各自取り組んだホームプロジェクトについて、2学期の2時間連続1回分の授業でポスター発表をした。その際、生徒は約20分間で10人分のポスター発表を聞いて回り、ルーブリックによる相互評価をした。授業のまとめに、自己評価をするとともに評価用紙に発表したことについての簡単な感想を自由記述した。なお、ルーブリックは「独創性」「設計性」「有用性」「発表態度・説明技術」の4観点からそれぞれ4段階で構成され、各段階には4点~1点を配して合計16点満点となる。まずパフォーマンス評価から得られた、4観点についての平均得点をSSHクラスと非SSHクラスで比較した。次に、自由記述から得たデータを分析し、プレゼンテーション能力が向上していくプロセスを読み解いた。<br>【結果】<br>ホームプロジェクト学習は単なる調べ学習ではなく、自分が生活の中から問題提起をするところに、その特徴がある。この問題設定の「独創性」を第一の評価基準とした。第二に掲げた問題を解決するために、あるいは事実を明らかにするために、ふさわしい方法でアプローチしていたかについて、「設計性」とした。第三に生活で役立つことにつながる行動を実際とったかについて、「有用性」とした。以上は、ホームプロジェクトの実践に対する評価であるが、第四は「発表態度・説明技術」からプレゼンテーション能力を捉え、前三つの項目とは異なる視点からの資質・能力の評価規準を加えた。<br>自己評価についてt検定によりSSHクラスと非SSHクラスで比較したところ、「独創性」(t(55)=1.91ns)、「設計性」(t(53.82)=0.29ns)、「有用性」(t(55)=1.03ns)「発表態度・説明技術」(t(55)=0.78ns)、とすべての項目において有意な差は認められなかったが、SSHクラスが高かった。記述データから「簡潔に」「身振り手振り」「アドリブ」をいれながら、「自分の言いたいことがはっきりしてきた」ので「伝えたい内容を絞れたり、強調したり」「話の組み立ても上手に」なり、「他のテーマに結びついた」「発表中に新たな視点を見つけた」といった理解が深まるプロセスが読み取れた。「聞き手によって表現を変える」余裕が生まれたり、「質問してくれると興味を持ってくれていることが伝わり」、協働的な態度となっていた。<br>【考察】<br>殆どの生徒にとって、あるひとつの事柄について複数回、他者に伝える経験は初めてであり、説明を繰り返す中で確かな手ごてを得ていたことが示された。生徒の学習成果を的確に示すべく、客観的指標の信頼性を高めるために、生徒が判断しやすいキーワードを明らかにし、問題解決学習のルーブリックを提案する。<br>なお、本研究はJSPS科研費奨励研究16H00051の助成を受けたものである。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595833344
  • NII論文ID
    130005286995
  • DOI
    10.11549/jhee.59.0_100
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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