高校家庭科の授業デザインと授業評価に関する実態調査

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タイトル別名
  • Investigation into class design and class evaluation in high school home economics

抄録

<br><br>【目的】<br><br>  2014年11月、文科省は、学習指導要領の改訂に向けた中教審への諮問に、学習・指導方法としてアクティブ・ラーニングを盛り込んでいる。家庭科では、生活課題解決能力を育成するために、これまでも様々な参加型の学習活動を導入して問題解決的な学習の充実が進められてきたが、今後一層学習活動を踏まえた授業デザインが求められる。一方、学習指導要領総則では、教師は授業を評価して授業改善することが明記されている。教師は、授業デザインで効果的なアクティビティ(学習活動)を創造し、授業実践し、授業後には授業評価により省察して授業を改善していくことが必要である。しかしながら、授業研究については、小中学校に比べて高校は低調であることが指摘されており、特に高校家庭科はほとんど各校教員1人体制で授業研究が困難であることが推測される。そこで、本研究では、高校家庭科教員に家庭科の授業デザインと授業評価に関する質問紙調査を実施して、高校家庭科における授業研究の実態を把握することを目的とする。<br><br>【方法】<br><br>   2014年8月~2015年1月、4県(茨城、神奈川、愛媛、山口)の高校家庭科教員に、学校への郵送あるいは高校家庭部会研究大会で配布して後日返送を依頼した自記式質問紙調査を実施した。376通を郵送または配布して186通の回答があり、回収率は49.5%であった。質問紙の調査項目は、勤務校の家庭科教員数、担当している家庭科必修科目、授業づくりの悩み、授業での重視点、生徒の意欲、実施している学習活動、授業後の省察状況と授業研究体制等である。<br><br>【結果】<br><br>(1)普通科のみの学校(100校)では、67%が専任1名で、9%が専任を配置していない。一方、普通科に職業に関する専門学科併設校(36校)、普通科以外の学校(49校)では、専任2名以上配置が5割を超えていた。<br><br>(2)授業づくりで最も悩むのは、「学習活動」75.3%、次いで「問題解決的な学習」73.7%、「授業の展開」68.8%、「生徒評価」62.9%だった。授業で重視していることは、「自己管理のための知識や技術を身につけること」、「人とよりよくかかわる力」は8割を超えて重視しているが、「批判的思考を促す」は31.2%と低かった。<br><br>(4)家庭科必修科目で実施している学習活動(18項目からチェック)は、調理実習97.7%、被服実習85.2%、ホームプロジェクト78.4%と高く、ロールプレイング27.3%、シミュレーション17.6%、KJ法9.1%、ディベート4.0%にとどまった。「家庭基礎のみ」と「家庭総合」「生活デザイン」担当者で実施している学習活動で有意差がみられたのは、被服実習、高齢者実習・交流で「家庭基礎のみ」の実施率が低かった。<br><br>(5)生徒の家庭科に対する意欲について、「意欲的である」と「意欲的でない」と捉えている者で実施している学習活動の数を比較した結果、「意欲的である」は学習活動数が7.32に対して、「意欲的でない」は5.29で有意差がみられた。具体的な学習活動では、調理実験、保育や高齢者の実習・交流、話し合い、ホームプロジェクト、家庭クラブの実施率が、「意欲的でない」が低かった。<br><br>(6)教職経験年数で実施している学習活動数に違いがみられた。「10年未満」は5.48、「10~20年」は6.74、「20年以上」は7.33で、10年未満の若い教員の学習活動が少なく、特に調理実験、保育や高齢者の実習・交流、家庭クラブの実施率が低い。<br><br>(7)授業の省察状況は、授業評価・改善を心がけている者は25.3%にとどまり、41.4%が多忙で自己の授業評価まで手が回らないと回答していた。家庭科の授業研究体制については、「整っていない」が34.4%にのぼり、「校内で授業研究がある」は30.6%であるが、「一人教科は校内研究が参考にならない」などの意見があった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205595842560
  • NII論文ID
    130005485175
  • DOI
    10.11549/jhee.58.0_47
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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