小学校家庭科における言語活動の充実をめざした授業開発
書誌事項
- タイトル別名
-
- The class development that aimed at the improvement of language activities in the elementary school home economics
説明
【目的】<br> 近年、知識基盤社会の到来や、グローバル化の進展など急速に社会が変化する中、子どもたちには、変化に対応する能力や資質が一層求められている。PISA調査(2009)や平成23年度全国学力・学習状況調査では、関係性を理解して解釈したり、自らの知識や経験と結び付けたりすることや、「活用」に関する記述式問題等、日本の子どもたちの思考力・判断力・表現力等に課題が認められている。その課題を踏まえ中教審答申(2008)や、小学校学習指導要領では、各教科等において思考力・判断力・表現力等を育成する観点から、言語環境を整え、言語活動の充実を図ることに配慮することが求められている。家庭科教育は、実践的・体験的な活動や問題解決的な学習を通して、身近な生活の課題を解決する能力の育成を目指している。生活の課題を解決する能力を育成するためには、衣食住などの生活の中の様々な言葉を実感を伴って理解する学習活動や、自分の生活における課題を解決するために言葉や図表などを用いて生活をよりよくする方法を考えたり、説明したりするなどの学習活動を充実させる必要がある。したがって、家庭科教育において言語活動の充実を図りながら学習を行うことは意義がある。そこで本研究では、山梨県の小学校教員を対象に、家庭科における言語活動についての実践等の現状を明らかにし、小学校家庭科における言語活動の充実を目指した授業を検討することを目的とする。<br><br>【方法】<br> 以下の調査を実施した。①山梨県内の小学校の家庭科主任や家庭科担当教員、山梨県小学校家庭科研究会所属の教員を対象に家庭科における言語活動についての実践等に関するアンケート調査(2013年11月~2014年1月実施)、②小学校教員へのインタビュー調査(8名.2013年12月~2014年1月実施)、③山梨県内の小学校1校の5・6年生140名を対象に児童への言語活動に関する実態アンケート調査(2013年12月実施)<br><br> 【結果及び考察】<br> 教員対象のアンケート調査においては、家庭科において言語活動を実践している教員は、約94%であり、ほとんどの教員が実践していることが明らかになった。家庭科における言語活動を通じて子どもたちに育成したい能力や態度に関しては、「実践的な態度」を育成したいと回答する教員が多かった一方、「論理的思考力」や「批判的思考力」の肯定的回答は少なく、教員の重視度の低い能力であることが明らかになった。ICT機器活用に関しては、ほとんどの教員が肯定的にとらえており、ICT機器を活用すると、子ども同士のやりとりが生まれ、言語活動に繋がることが示唆された。教員対象インタビュー調査では、教員は子どもたちの実態として、表現力や活用力が低いことを挙げており、言語活動を通して、教員はコミュニケーション能力と活用力を子どもたちに育成したいと考えていることが分かった。また、家庭科を通して子どもたちに育成したい力は、「生活実践力」と回答する教員が多く、その他にも、「自己肯定感」や「男女共同参画の意識」が挙げられた。児童対象のアンケート調査においては、「よく考えて物事を決める」などの思考力・判断力・表現力等に関する項目や、「学校で学んだことを、自分の生活の中で実践する」などの生活意欲や態度に関する項目間で、関係性が認められた。中でも「論理的思考力」、「課題解決能力」、「批判的思考力」が高い児童は、家庭生活の意欲も高いということが明らかになった。このことから、生活態度、生活習慣を主体的に取り組む家庭科の実践は、思考力・判断力・表現力等の育成につながると推測される。以上の調査の検討を行い、2年間のカリキュラム案を作成し、「身近な消費生活と環境」の領域における具体的な授業計画を考案した。 今後の課題は、本研究結果を踏まえ、授業実践を行い、本研究の妥当性を検証することである。
収録刊行物
-
- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
-
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 57 (0), 97-, 2014
日本家庭科教育学会
- Tweet
キーワード
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205596059264
-
- NII論文ID
- 130005478240
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可