省エネ行動変容ステージモデルに応じた教育支援策による意識・行動変容効果

書誌事項

タイトル別名
  • Energy-saving conscious and behavioral change effects by educational support according to the behavior modification stage model

説明

【目的】これまでの研究では「省エネ教育」により意識及び行動変容が促進されている項目と変化の得られない項目とを抽出し,行動変化の障壁となっている阻害要因及び実践できない理由を明らかにし,今後の教授方法の在り方,提案方法を検討した。その結果,省エネ行動項目の中で実践度が低い項目に関しては,意識が変わるだけでは行動に結びつかない項目が多く,それには難易度に応じた省エネ教育と、日常の行動への取り組みの個人差を考慮する必要性が確認された。さらに,環境問題への関心が低いグループでは,省エネ教育後も省エネ行動変容が見られないことが示唆された。加えてそのような個人差を,健康・栄養改善にて推進されている「無関心期」「関心期」「準備期」「実行期」「維持期」の5段階の行動変容ステージモデルが,省エネ行動にも適用できることを確認してきた。今年度は,介入効果を詳細に分析するために、各ステージに合わせた省エネ教育を実施することで,教育前のステージからどの教育段階で行動が変容し,ステージも上昇し,効果が得られたのかを検証することとした。<br />【方法】対象者は,T大学3年生 家庭科教職課程必修科目「食教育の研究」平成28年度履修者 43名とした。省エネ教育は,全8時限実施し、毎時限終了後に自己評価シートを記入させた。自己評価シートの内容は「環境への関心度」、「食生活に関する省エネ行動15項目」、「現在の省エネ行動ステージ」である。授業初回の省エネ行動ステージをベースとした。授業計画は,1、2時限目は「無関心期」を想定し、省エネ行動変容の必要性に関する情報提供(環境への導入教育),3,4時限目は「関心期」を想定し、省エネ行動変容の方法・過程に関する情報提供(具体的な省エネ行動を取り入れた講義と調理デモンストレーション),5,6,7時限目は「準備期」を想定し、省エネ行動目標設定と行動変容のためのコーチング(調理実習、ゲームによる省エネ行動疑似体験等),8時限目は「実行期」及び「維持期」として、省エネ行動持続のためのコーチング及びフィードバック,フォロー(自己評価シートの振り返り)を盛り込んだ。毎時限の自己評価シートの結果より、環境への関心度及び省エネ行動ステージの変化、さらに食生活に関する省エネ行動15項目は実践状況を3段階の評価尺度で尋ね、点数化して比較した。<br />【結果】大学生を対象に、行動変容ステージを意識しステージに合せた教育内容を盛り込むことで,実際の省エネ行動実践ポイントがどう変化するか,また,どの段階で省エネ行動ステージが変化するかを確認し,以下の結果を得た。43名中,無関心期は0名,関心期25名,準備期17名,実行期1名,維持期は0名であった。環境への関心度は 1時限目及び2時限目の環境問題に対するベースを揃えるための導入教育を実施することで,3時限目には「あまり関心がない」と答えるものはいなくなった。教育前の食生活に関する省エネ行動実践ポイントは,買い物の項目で買い物ゲームを6時限目に実施して以降,最終回にはいずれのステージも実践ポイント3.5以上となり,高い実践状況になった。調理に関する実践状況はいずれのステージも比較的高く、教育後さらに上昇した。片付けに関する項目ではステージの高い層から回を追うごとに変化が見られた。片付けは調理に比べると学生にとっては興味や関心が薄いため、情報提供だけでなく,体験なども盛り込むことが有効であった。省エネ行動変容ステージモデルの関心期は5回目で約50%が次のステージである準備期もしくはその上の実行期に移行しており,準備期も同様に5回目で約59%が次の実行期ステージに移行していた。実行期も6回目で維持期に移行しており, 43名中33名(76.7%)がステージ移行を達成していた。今回移行できなかった23.3%に対しては,どのような教育を行うことで上のステージに変えられるのかを,今後検討する必要がある。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205596853504
  • NII論文ID
    130005966593
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_74
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ