小学校教員を目指す大学生の「清掃」の授業に対する意識

書誌事項

タイトル別名
  • Attitude to the Lesson of "Cleaning" of Students in Elementary School Teacher Training Course

説明

研究目的 本研究は、小学校家庭科における住居領域の中でも「清掃」に着目したものである。「清掃」は、特別活動として児童の多くが学校の中で日々経験している行為であり、「清掃などの当番活動等の役割と働くことの意義の理解」と位置付けられている。教科としての家庭科における「清掃」の扱いはそれとは異なるはずであるが、行為そのものが同じであるだけに混同して指導されていたり、教員の個人的な経験に基づいた指導がなされていたりする恐れがある。家庭科における「清掃」の授業で、児童に何を教えるべきなのか、その位置づけを明確にする必要がある。そこでまず、授業実施者である教員の「清掃」の授業に対する意識を把握するために、現職の教員および小学校教員を目指す大学生に対し、アンケート調査を実施した。本報では、小学校教員を目指す大学生を対象としたアンケート調査結果について報告する。<br />研究方法 4大学において小学校教員を目指す学生に対し、小学校家庭科の住居領域「清掃」に関する内容を取り扱う科目を受講していない段階でアンケート調査を実施した。配付および回収は、講義担当者に依頼し、講義時間中に行った。調査対象者は314名、調査期間は2016年10月~11月である。調査内容は、小学校の家庭科で「清掃」を教えることの必要性について、教員になった際、「清掃」の授業で児童に何を教えたらよいと思うか、自身の清掃経験について、日常生活の中での清掃の必要性について、などである。<br />結果 アンケート調査の結果を以下に要約する。<br />①調査対象者の男女比は3.5:6.5と女性が多数を占め、自宅生と下宿生はほぼ半数ずつであった。平均年齢は20歳であった。<br />②小学校の家庭科の授業で記憶に残っているのは、「食物(調理実習)」(57%)、「被服」(35%)が多く、「住居」をあげた学生は皆無であった。また、「清掃」の授業を受けた記憶の「ある」学生は17%、「ない」は27%、「記憶にない」が56%と半数以上であった。「清掃」の授業が「住居」の領域と結びついていない学生が2割程度いることが分かった。<br />③家庭科で「清掃」を教えることは必要かどうかについて尋ねたところ、67%が「必要」と回答し、「必要ない」は8%とごく少数であった。また、「わからない」と回答した学生が25%いた。<br />④日常生活の中で掃除が必要かどうかの理由について9項目の中から一つを選択してもらった結果、「掃除をしないと不衛生だから」が最も多く56%、次いで「精神的によい(気持ちがすっきりする)」が20%、「健康に悪いから」13%と続き、「必要ない」は5%と少数だった。また、「家が傷むから」といった維持管理につながる選択肢への回答は0.7%とごくわずかであった。<br />⑤家庭において手伝い等で経験したことのある掃除内容を複数回答で尋ね、選択された項目数により調査対象者を4タイプに分類し、項目数が多いほど掃除経験値が高いとした。その結果、掃除経験値が低いと「雑巾がけ」、屋内外の「ほうき」の経験に乏しい。また「窓掃除」の経験値も低いなど、小学校で行っている掃除内容も家庭では経験していないことが分かった。全体的に「ほうき」は屋外よりも屋内での経験値が低く、また「畳の乾拭き」の経験値も低い。住宅の洋風化が掃除経験に影響を与えていると考えられる。<br />⑥前項の掃除経験値の分類を用いて③と④の設問の分析を行った。掃除経験値が高いほど家庭科で「清掃」の授業が「必要」と考え、低いと「必要ではない」または「わからない」の割合が高い。日常生活の中で掃除が必要な理由については、「不衛生だから」が掃除経験値の低いものが最も高い割合を示し、「健康に悪いから」では最も低い割合を示した。また、掃除経験値が高いと「精神的に良いから」の割合が高い傾向にあり、「すっきりした」といった個人的な経験が回答に影響していると考えられる。

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205596856832
  • NII論文ID
    130005966606
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_67
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ