孤食対策事業「ふれあい食堂」の実態調査

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書誌事項

タイトル別名
  • A survey of eating alone measure business "contact dining room"
  • 調理ボランティアに参加して

抄録

【目的】<br /> 2005年施行された「食育基本法」を受けて,2008年中央教育審議会答申において小・中・高等学校および特別支援学校の学習指導要領総則に「食育」が明記され,食育を学校の教育活動全体で取り組むことになった。家庭科は2005年度から配置が始まった栄養教諭と同様,「食育」推進の中心的教科としての役割が求められた。「食育基本法」の理念を具現化するため,5年ごとに数値目標を設定し,活動状況を検証している。2016年度第3次食育推進基本計画(厚生労働省:2016~2020年度)では特に①朝食を欠食する子どもの割合②朝食又は夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数を増やす等,「孤食対策」に関する記述が多い。<br /> 本学に近い松山市鷹子町の久米公民館では,2016年7月から久米地区孤食対策事業の一環として,久米公民館・久米ふれあいタウンづくり協議会が主催して「ふれあい食堂」の運営を開始した。本学の栄養教諭を目指す学生が調理ボランティアを依頼されたことをきっかけに「孤食」の現状と課題に気づく機会があり,その実態について報告する。<br />【方法及び調査内容】<br /> 久米公民館で,毎週木曜日の夕方6時から,事前に申込をした「1人で食事をしている」小学生と地域の方が集まって一緒に食事をするという「ふれあい食堂」に,本学で栄養教諭を目指す5名の学生とともに調理ボランティアとして参加した。食材等は地域の方からの寄付がほとんどであり,集まった食材を使って地域で勤務する栄養士が献立を作成している。また調理についても,本学の学生と地域の婦人会の住民で主に行っている。参加費用は18歳以上が100円,18歳以下は無料である。調理ボランティアとしての参加を通して,主に次の3点について聞き取り調査を行った。要旨では紙面の都合上(2)の項目についての結果を述べる。<br />(1)「子ども食堂」と「ふれあい食堂」の違い<br />(2)孤食の現状(久米ふれあいタウンづくり協議会が小学校と協力して実施したアンケート結果と参加者数に関する内訳記録より)<br />(3)「ふれあい食堂」が目指すもの<br />【結果および考察】<br /> 本学の学生が初めて参加した2016年7月28日は,小学校が夏休みということもあり小学生13名,スタッフ以外の地域の高齢婦人7名,婦人会や本学の学生ボランティアを含めると合計43名で,大変盛況であった。その後学生たちが参加した8月4日・25日は小学生平均11.5名,高齢婦人平均9.0名,9月8日・15日・29日では小学生平均7.3名,高齢婦人平均7.0名で,小学生以上に地域の住民がとても楽しみにしていて「共食」の大切さが本学の学生にも十分伝わった。<br /> 2015年国勢調査では1人世帯が最も多く(32.5%),世帯内の相互扶助関係に依存できないケースも増えている。久米地区は人口が3万人を超えて松山市の中で3番目に多い。病院や公共交通機関も整備されている地区だが高齢化率も22.1%と高く,例外ではない。毎回「ふれあい食堂」に参加している婦人は,この食事のためにバスに乗って参加している。「1人で食事すると食欲もわかない。みんなで食べると美味しいのよ。」という言葉が重い。<br /> また本学の学生たちからは,婦人会の方々と協力して作った食事作りの経験を通して「学校で学べる事以外に料理のコツもたくさん教えていただいて,ご家庭ごとに様々なこだわりがあることを知りました。料理に対する視野が広がり,良い経験になりました。」という感想が寄せられた。帰る際に多くの方に「美味しかった」「次も楽しみ」と声をかけていただき,栄養教諭としての自覚につながった。積極的に地域の活動に参加することで,学生たちも自分で考え行動できる社会人に一歩近づくことができた。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205596860032
  • NII論文ID
    130005966611
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_62
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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