小学校特別支援学級における食教育プログラム

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タイトル別名
  • A New Nutritional Education Program for Special Needs Education Classes of Elementary Schools

抄録

【目的】<br /><br />近年,特別支援学校や特別支援学級に在籍する児童・生徒の割合は増加傾向にある。文部科学省の調査によると,それに該当する児童・生徒は総数の約2.7%,学習や生活の面で特別な教育的支援を必要とする児童・生徒の割合については約6.7%という状況である。このような子どもたちの課題について,文部科学省は,将来に向けた生活の自立と社会参加できることであると明示している。また,それらの課題を解決するための方策として,特別支援学校や特別支援学級には,生活の自立や社会参加のための教育を行う領域として自立活動を設けている。とりわけ,障害を抱える子どもの多くは,食行動における課題があることから,望ましい食習慣を身につけさせるための継続的な取り組みが求められている。<br /><br />そこで,本研究では,小学校特別支援学級に在籍する高学年の児童を対象とした食教育プログラムを開発し,家庭科と自立活動の授業で行った。プログラムは,視覚的教材を用いた学習や個別で行う調理実習を取り入れ,長期間で取り組む構成とした。結果は以下の通りであった。<br /><br />【方法】<br /><br /> 研究対象者はN市立H小学校,特別支援学級の自閉・情緒学級に在籍する第5学年の男児4名である。授業は,単元「食事について考えよう!」(全19時間,授業回数は15回)として,家庭科と自立活動の時間で,平成27年5月~平成28年3月に実施した。プログラムは,小学校家庭科教科書の学習内容と文部科学省『食に関する指導の手引』を参考に,食教育プログラムを構成した。それを踏まえ,プログラムの視点を以下の5つに設定した。1.教科書や給食の献立表を利用して,食材の名前やグループを理解し,食の学習へ関心を持つ。2.食品カードやお弁当教材など視覚的教材を操作することを通して,バランスの取れた食事を理解し,自分の食生活を意識したり,見直したりしようとする。3.調理用具の名称や使い方,材料の切り方,調理の手順等を理解し,児童が一人で調理をする意欲を持つ。4.好き嫌いなく残さず食べることができる。5.食事のマナーに気をつけて,食事ができる。<br /><br /> 分析方法としては,授業中のビデオと児童が記述したワークシートを分析対象とした。授業中のビデオ映像からは,事象見本法を用いて児童の行動を分析した。また,毎授業で使用したワークシートから,興味・関心,意欲に関わる内容を抽出し,記述されている内容からカテゴリーを形成して結果を整理した。その他に,調理実習で使用したワークシートからは,記述内容を児童別に整理して分析した。<br /><br />【結果】<br />授業は,児童の関心を高めさせるため,視覚的教材を多く取り入れた食教育プログラムを構成した。視覚的教材を取り入れた授業によって,児童の食への興味・関心は高まり,着席の遅れや手遊びなどの行動は減り,児童の変容が見られた。また,自分の食生活の改善や栄養バランスを良くしようという感想文の記述から,児童の食生活への意識が高まったことが明らかとなった。調理実習後のワークシートの記述から,料理のおいしさ,児童の調理に対する達成感が述べられていることから,自分で調理し食べることへの意欲が見られた。これらから,小学校特別支援学級在籍の児童には,視覚的教材を使うことによって,自己の食生活に対する関心を高められることが明らかとなった。また,一人で行う調理経験も重要で,それは,児童がこれまでの食生活を振り返り,自分の食に対する意識や調理して食べることへの意欲を持たせることに効果的であった。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205596869632
  • NII論文ID
    130005966631
  • DOI
    10.11549/jhee.60.0_59
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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