バイレック法による正確で簡便な吸水速度測定法の検討
書誌事項
- タイトル別名
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- A correct and simple measurement of water absorbency by Byreck method
説明
【目的】<br>大学生を対象にした衣服と繊維に関するアンケートで,「服(トップス)を買うときに考慮する条件」を尋ねた結果,デザインや価格は重視するが,4割以上の学生が繊維名には注意を払わないと答えたことから,少なくとも購入時には品質表示があまり役立っていないことがわかった。また,中学校,高校で学んだ繊維の性質に関する知識のうち,特に化学繊維についてはあまり身についておらず,たとえ衣服購入時に品質表示を見ても,その衣服の性能を予想できないこともわかった。学校の授業で学んだ繊維についての知識が児童・生徒に定着し,衣服購入時などその後の衣生活に生かされることが望ましいと考える。知識を定着させる方法の1つに,実験を取り入れて印象に残る授業をすることが挙げられるので,本研究では,布の重要な性質のひとつである吸水性に注目し,バイレック法による吸水速度測定において,吸い上げ高さを見やすくする種々の方法を試み,より視覚的にとらえやすく,正確で簡便な測定方法を考えることを目的とした。<br>【方法】<br>1.試料布:綿,麻,羊毛,絹,レーヨン,キュプラ,アセテート,ナイロン,アクリル,ポリエステル(PET)および綿35%/PET65%混紡布の11種類の布(平織物,日本規格協会および色染社(株))を試料とし,各々の繊維に適する方法でのり抜き処理をして用いた。2.試薬:水性染料としてインジゴカルミンⅠa(WALDECK),メチレンブルー(和光純薬),食紅(紅屋食品化工(株)),青色水性インク(ダイソー),3種類の水性ペン(a),(b),(c)を使用し,水は水道水を用いた。3.方法:布の吸水速度測定はJIS法に基づくバイレック法で行い,吸水させる水を色水にする,あらかじめ化粧用の刷毛を用いて試料布に粉末染料を振りかけておく,試料布に水性ペンで点や縦線を記入しておく等の工夫を施した。また,経時変化を読み取るためには,布に5 mm 間隔の横線を記入した。測定はすべて室温(22±2℃)で行った。種々の方法について,①結果が見やすいかという目印の効果,②実験準備の手間,③測定のしやすさ,の各観点から判断し,総合的に評価した。<br>【結果】<br>吸い上げ高さを見やすくするために色水で測定を行ったところ,インジゴカルミン,メチレンブルー,水性インクは吸い上げ高さよりも低い位置までしか色素が這い上らず目印にならなかったが,食紅では親水性の布での測定が可能であった。これに対して,あらかじめ試料布に水溶性の粉末染料を散布しておく方法は,散布する量の調整が難しく,実験準備中および実験中に周りが汚れやすく,児童生徒が実験を行いやすい方法ではなかった。また,親水性の布では,水性ペンや水性染料を布の下方に少量付けて測定すると,簡便で見やすく非常に行いやすかった。しかし,この方法を疎水性の布で試みると,色素が水に溶けて消え,目印にならなかった。試料布にあらかじめ水性ペンで縦線を書いておき,水を吸い上げることで線を滲ませる方法は見やすかったが,吸い上げ高さの上端が水平でない場合が認められた。この原因はインクの親水性の程度により,インクが親水性繊維では濡れを抑制し,疎水性繊維では濡れを向上させるためであり,測定値に影響する可能性があることがわかった。しかし,ペンの影響の最も小さい試料布の左右の端の高さを測定することにより,ほぼ正しい値を読み取ることができた。以上の各方法で用いる水性染料や水性ペンについて,水の吸い上げ高さと色素の上昇高さが異なるものも多いので,予備実験により染料やペンを選択する必要があると考えられる。さらに,吸水速度の経時変化を調べる実験では,試料布に鉛筆で 5 mmごとの目盛りを付け,水性ペンで縦線を書き加え,試料布の両端の値を読むことにより,見やすく正確な測定値を連続的に得られるという結論に達した。
収録刊行物
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- 日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
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日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集 57 (0), 66-, 2014
日本家庭科教育学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205597305344
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- NII論文ID
- 130005478202
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可