食生活の向上をめざした調理実習の学習指導方法

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タイトル別名
  • Teaching method of food preparation for improvement of students' eating habits

抄録

目的 食生活の向上のためには、調理技能の習得および家庭における調理の実践を促すことができる調理実習の学習指導方法を検討することが必要であると考える。そこで、中学校において加熱調理と包丁使用に焦点をあてた調理実習指導を行い、家庭学習課題を導入した授業を実践した。学習者の授業後の意識の変容と技能の習得状況を検討し、実施した学習指導方法の効果と課題を明らかにする。<br>方法 1 現行の中学校「技術・家庭」家庭分野教科書に掲載されている調理法と切り方を調査する。2 広島県T中学校において後述の学習指導方法を導入し、授業前後の質問紙調査から生徒の意識の変容を、きゅうりの事前事後の実技テストおよび授業後の教科書を見ながらの鮭のムニエルの実技テスト結果から技術習得状況を把握する。調理実習4人グループにおいて加熱操作と包丁使用を各2人の生徒が担当し、次回の調理実習では担当を交替して両方の技能習得をはかった。また、冬季休業中の家庭における生徒の加熱調理と包丁使用の記録を提出させた。2013年10月~2014年2月に第2学年32名(男子12名、女子19名)を対象とした。<br>結果 現行の中学校家庭分野教科書3冊に取り上げられていた料理数は、33、33、35であった。調理法による分類では、煮物が料理全体の39%を占めている教科書、焼物が33%を占める教科書、さまざまな調理法を取り上げている教科書と傾向がかなり異なっていた。3冊の平均では、焼き物が28%、煮物が27%、汁物が22%、ゆで物が5%であった。包丁を使用しない料理は、各教科書掲載料理全体の21~26%を占めていた。切り方では、みじん切りを料理全体の21%と最も多く掲載していた教科書が1冊、他の2冊の教科書は長さまたは幅を指定した切り方を多く掲載し、それぞれ27%、17%を占めていた。3冊ともに多様な切り方を1回ずつ取り上げる場合が多かった。<br> きゅうりを30秒間で約2mmの厚さに半月切りをする実技テストでは、事前に生徒は8~41枚を切り、平均は24枚であった。調理実習(ハンバーグ・野菜サラダ、ブリの照り焼き・サツマイモご飯・青菜の胡麻和え)後は、生徒は19~70枚を切り、平均は35枚であった。事前よりも枚数が減少した生徒は、緊張した、事前よりも切る厚さに注意したので数が減ってしまった等の理由をあげていた。<br> 4件法による授業前後の生徒の意識変容は次の通りであった。「包丁を使って野菜を切ること」に、「とても自信がある」生徒が事前の26%から事後は47%に増加し、「あまり自信がない」生徒は事前の19%から7%に減少した。「手際よく包丁が使える」に、「とても自信がある」生徒は事前の13%から11%に減少したが、「少し自信がある」生徒が事前の32%が39%に増加し、「あまり自信がない」が事前の45%から43%に減少し、「全く自信がない」が10%から7%に減少した。授業後は、手際はよいとまではいえないが包丁使用に自信を持つ生徒が増えていた。<br> 授業後の加熱操作の実技テストの結果は次の通りであった。食材の火の通りに関して、教員は生徒全員をAと評価したが、試食を伴う生徒の自己評価でわずかであるがBとした生徒もいた。焼き色に関しては、教員の評価と生徒の自己評価は一致し、約1/4の生徒は火の通りをよくしようとして焼きすぎてBの評価であったが、3/4の生徒はAであった。この結果から、授業後の生徒の平均的な加熱操作の技能レベルは高いといえた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205597377792
  • NII論文ID
    130005478288
  • DOI
    10.11549/jhee.57.0_58
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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