日本脳炎ウイルスのアカイエカ体内での越冬の可能性について

書誌事項

タイトル別名
  • Possibility of overwintering of Japanese encephalitis virus in <I>Culex pipiens pallens</I>

説明

近年,我が国における日本脳炎患者数は年間10名以下の状況が続いているが,野外環境下における日本脳炎ウイルス(JEV)の活動は依然として活発である.一方,コガタアカイエカの活動時期や生息場所以外での患者の発生が報告され,ウイルス遺伝子の変異と蚊の感受性に関する情報も増えつつある中,コガタアカイエカ以外の感染環の存在が指摘されている.JEVのコガタアカイエカ体内での越冬の可能性についてはこれまでに多くの議論がなされ,その可能性はほとんどないと結論された(小田ら, 1978).つまり,短日下で羽化したコガタアカイエカ雌の吸血と産卵は抑制され(栄養生殖分離),秋にJEVを取り込み越冬する雌蚊の数は極めて少ないと考えられたからである.ところが,様々な温度と日長条件下でイエカ類の寿命を比較した我々の実験では,高温・長日下で羽化し,その後低温・短日下で飼育された雌の寿命は極めて長く,アカイエカで最長282日,コガタアカイエカでも150日以上生存することが分かり,夏季に羽化した個体が越冬する可能性が示唆された.そこで本大会では,低温耐性と栄養生殖分離をもとに,特にアカイエカにおけるJEVの越冬の可能性を検討した.<BR>  JEV感受性があるとされるコガタアカイエカ,アカイエカおよびチカイエカ(Turell et al., 2006)を羽化後様々な温度・日長条件下で飼育し平均寿命を比較した.アカイエカは他の2種に比べ最も寿命が長く,15℃短日下では155.5日(最長282日)生存し,特に5℃前後の低温下では70日を超え有意に長命であった.栄養生殖分離を発現する日長,およびその覚醒を促す条件等の結果と併せてJEVの蚊体内での越冬を検討した結果,コガタアカイエカが国内で越冬できる地域は限局され,その確率は低いと考えられるが,アカイエカの生理・生態的特徴はむしろJEVの越冬に適していると結論された.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205620604672
  • NII論文ID
    130006980299
  • DOI
    10.11536/jsmez.62.0.73.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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