釧路湿原周辺に生息する蚊の吸血源動物の推定

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タイトル別名
  • Blood-meal identification of mosquitoes inhabiting at wetland Kushiro, subarctic zone of Japan

抄録

これまでに、我々は主に関東地方において、鳥マラリアなど蚊媒介性感染症の伝播様式の解明を目的として、ベクターとなる各種蚊の吸血源動物種を推定してきた。亜寒帯気候の北海道に分布する蚊の種構成は、温帯気候の本州とは大きく異なり、吸血対象動物についても不明な点が多い。北海道は渡り鳥の飛来地が多く、鳥類由来感染症のモニタリング地点として重要で、病原体伝播リスクを検討するため、そこに生息する蚊の吸血源動物の解明が必要である。そこで今回、飛来地の一つである北海道東部の釧路湿原周辺で捕集した蚊の吸血源動物を推定し、調査地に生息する蚊の吸血行動に関する情報を集めた。 釧路湿原周辺に位置する釧路市動物園および釧路野生生物保護センターにおいて、2008年7月28、29日の2日間と、2009年8月3、4日の2日間、CDC型ドライアイス誘引トラップおよび捕虫網を用いて蚊を捕集した。腹部に血液貯留が認められた個体からDNAを抽出し、脊椎動物遺伝子を標的としたPCRを行った。増幅が見られた場合は塩基配列を決定し、GenBankに登録されている既知の配列と比較し、動物種を推定した。 エゾヤブカ、アカンヤブカ、チシマヤブカ(またはキタヤブカ)、キンイロヤブカ、アカエゾヤブカ、ハマダライエカ、ミスジハボシカおよびヤマトハボシカの8種309個体の吸血蚊が捕集され、その80%以上がエゾヤブカであった。そのうち279個体から13種類の脊椎動物の遺伝子が増幅され、80%以上がエゾシカを、約1%がヒトを吸血していると示唆された。また、ハマダライエカを除く7種が哺乳類を吸血し、そのうちの4種は鳥類も吸血していた。エゾヤブカはヒトを含めた哺乳類、鳥類および両生類を吸血源としていることが示唆され、多様な病原体を取り込む可能性の高い種であると推察された。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205620627456
  • NII論文ID
    130005478334
  • DOI
    10.11536/jsmez.63.0_43_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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