岡山県のヌートリアにおけるリケッチア保有状況調査

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タイトル別名
  • Survey of Rickettsia in Nutria in Okayama Prefecture,Japan

抄録

ヌートリアは特定外来生物に指定されている南米原産の齧歯類であり、岡山県は全国一生息数が多い。半水性であり川や沼から遠く離れることはないが、水系に沿ったリケッチア保有ダニの運搬に関与している可能性がある。しかし、本種のリケッチア感染実態やダニの保有状況は世界的にも調査例が少ない。そこで、ヌートリアに付着するダニ相、またリケッチア属菌及びオリエンチア属菌の感染実態の解明を目的として、岡山県全域を対象に調査を行った。 調査は2010年1月から9月の期間に実施し、148頭のヌートリアを捕獲した。脾臓からDNAを抽出し、リケッチア属菌の17kda領域及びオリエンチア属菌の56kda領域を標的とする2系統のPCRにより、遺伝子検索を行った。また耳介からダニを捕集し、種の同定を行った後、DNAを抽出し、17kda領域について同様に遺伝子検索を行った。陽性個体の一部については、遺伝子配列を決定し系統解析を実施した。なお、マダニについては、日本紅斑熱の原因菌であるRickettsia japonicaを特異的に検出するreal-timePCRを実施した。 ヌートリア64頭の脾臓のPCR結果は、全て陰性であった。76頭中17頭の耳介から223匹のマダニが回収されたが、ツツガムシは確認されなかった。マダニの内訳はフタトゲチマダニが209匹、キチマダニが14匹であった。PCRの結果、85匹中31匹が陽性であったが、real-timePCRでは陰性であり、R.japonicaでは無いことが確認された。一部の検体について系統解析を行ったところ、全てRickettsia sp.のLONタイプあった。 本調査によって、岡山県に生息するヌートリアの保有ダニ相がほぼ明らかになった。最も多く付着していたフタトゲチマダニは、R.japonicaの媒介に関わることが報告されているが、今回検出されたリケッチアは、全て病原性が無いとされるLONタイプであった。脾臓のPCRは全て陰性であったが、血清検査が未実施であり、現状ではヌートリアへのリケッチアの感染実態についての結論は出せない。今後、さらに調査を行い、実態を解明していく予定である。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205620691968
  • NII論文ID
    130005478387
  • DOI
    10.11536/jsmez.63.0_61_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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