熊本県上天草地域の日本紅斑熱感染におけるイノシシの疫学的役割

書誌事項

タイトル別名
  • Epidemiological role of wild bores for Japanese spotted fever infection in Kamiamakusa, Kumamoto

説明

日本紅斑熱(JSF)はRickettsia japonica(Rj)を病原体とするマダニ媒介性感染症であり,熊本県では2007年から上天草地域に集中して患者が急増している.同地域では野生イノシシ生息数の増加とJSF感染の関連が疑われているが,その実態は不明である.今回,JSF感染におけるイノシシの疫学的役割の解明を目的として調査を行った.【材料と方法】2009年10月~2010年9月に同地域で捕獲されたイノシシの血液49頭分,およびイノシシより回収されたマダニ388個体,また,2010年4月と8月に患者発生地周辺の畑で旗振法により採取されたマダニ197個体を材料とした.血液は血清と血餅に分離し,それぞれRj Aoki株を抗原としたIFAおよびRickettsia属特異的nested PCRに供した.マダニは同定後適宜114個体を選抜してDNA抽出を行い,nested PCRによりRickettsia検出を行った.PCR陽性検体は遺伝子解析または種特異的PCRにより感染種を同定した.【結果と考察】イノシシ全個体で40~640倍以上の抗体価がみられたが,末梢血PCRは全て陰性を示した.イノシシからはヤマアラシチマダニ,タカサゴチマダニ,キチマダニ,タカサゴキララマダニの2属4種が回収され,PCRでは236検体中キチマダニ以外の3種10検体(4.2%)からRj遺伝子断片が検出された.旗振法ではフタトゲチマダニ、アカコッコマダニを加えた3属6種が採取された.PCRでは4月には87検体中タカサゴチマダニ1検体(1.1%)から,また8月には17検体中ヤマアラシチマダニ2検体(7.4%)からRj遺伝子断片が検出された.以上の結果から,同地域のイノシシはRjに高率に暴露されているものの,保菌動物となる可能性は低く,Rj保有マダニの運搬者となっていることが考えられた.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205620704384
  • NII論文ID
    130005478396
  • DOI
    10.11536/jsmez.63.0_68_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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