ユスリカ成虫の走光性に関する野外研究

書誌事項

タイトル別名
  • Field research on phototaxis of chironomid midges

説明

ユスリカ科昆虫は極めて多くの種を含み、魚類の天然餌料として重要であるとともに、水質の生物指標としても有用である。その一方、特に富栄養化が進んだ水域から多くの種が大発生し、不快害虫や吸入性アレルゲンとして問題となっている。岡山市の南部に位置し、岡山市・倉敷市・玉野市などの生活・産業排水に起因する富栄養化が著しい児島湖では、近年、オオユスリカ・アカムシユスリカの大型2種ユスリカが初夏あるいは晩秋に大量発生し、民家・事業所等に襲来するため、周辺住民からの苦情が続出し、早急の防除対策が求められている。本研究では、児島湖畔において、430-620nm付近に単一のエネルギー・ピークを示す6種のLEDランプ(Deep blue~Red)を付けたボックス型のライト・トラップを用い、日没の30分後から一定時間内の飛来数を比較することにより、湖岸沿いに設置している誘蛾灯用ランプとして、どのような波長のものを用いれば民家等への襲来を効果的に軽減できるのかを検討することを目的とした。その結果、合計3亜科16種が採集され、これらのうち、上記2種にミナミユスリカ・メスグロユスリカ・ハイイロユスリカ・オオミドリユスリカを加えた主要6種成虫の何れについても、520nm付近にピークを持つ光(green)に最も強く誘引される傾向があり、季節的にも顕著な変化は見られなかった。しかし、ランプ種によって放射照度が著しく異なるため、単位時間当たりに誘引される個体数を単位放射照度当たりに換算し、各種の趨光曲線を描いたところ、ミナミユスリカに対してはやはり520nm の光が最も強い誘引性を示したが、これから分類学的に遠く離れたアカムシユスリカではさらに長波長側の590nm にピークを持つ光(amber)が最も強い誘引性を示し、種間で差が見られた。これは種間で視細胞内のオプシンの性質・組成に違いがあることを示唆する。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205621027072
  • NII論文ID
    130005478452
  • DOI
    10.11536/jsmez.63.0_82_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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