Dengue fever

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  • デング熱

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デングウイルス感染症は熱帯地域に於ける蚊媒介性ウイルス性疾患のうち最も重要な疾患であり世界保健機関(WHO)の推計によると1年間に世界では数千万人の感染者が発生している。デングウイルスがヒトに感染した場合、比較的穏やかに経過する発熱·発疹を主症状とするデング熱と重症で致死的な出血性疾患であるデング出血熱という2つの病型を示す。デング熱は急性の熱性疾患で有毒蚊に刺された後、2∼7日の潜伏期を経て突然の発熱(時に2峰性)、頭痛、関節や骨及び筋肉の痛み、吐き気や嘔吐、皮疹(大丘疹)、白血球減少などの症状を呈する。微少皮下出血や歯茎からの出血や血小板減少もときおり観察される。また成人の感染では回復後、倦怠感や鬱状態の見られることもある(Post-dengue depression)。予後は一般的に良い。一方、デング出血熱では高熱、出血傾向(皮下出血、鼻出血など)、肝腫大、そして重症例に見られる循環不全による諸症状(四肢寒冷、あくび、口囲蒼白、呼吸数増加、頻脈、低血圧)が見られる。この循環不全は発症後2∼5日目に解熱とともに急速に悪化する場合が多い。また著明な血小板減少(100000/mm3以下)も特徴的である。さらに病状が進行すると消化管からの大量出血や脳内出血がおこり死に至る。しかし適切な処置により重症期を乗り切れば後遺症を残すことなく治癒する。デング熱とデング出血熱は共通する症状が多く症状だけではしばしば鑑別が困難である。しかし両者は予後が異なるので「出血を伴なったデング熱」と「デング出血熱」とは鑑別し対処しなければならない。両者の本質的な違いは血管からの血漿漏出の有無である。デングウイルスは主として熱帯シマカ(Aedes aegypti)により媒介されるが、この蚊がヒトの生活の場(都会や集落)で増殖する習性とヒト-蚊-ヒトのサイクルでウイルスを効率よく媒介出来る特徴から、デングウイルス感染症は熱帯地域の人口密集地において猛威をふるっており患者数·流行地域ともに増加·拡大している。また近年わが国でも熱帯地域への旅行者の増加により輸入感染症としてデング患者が発生しており熱帯地域への旅行では注意が必要である。デングのワクチンは未だ開発されておらず、流行地域における個人レベルでの予防法としては熱帯シマカに刺されないよう蚊忌避薬を使用したり、露出部分の少ない衣服を着る事が必要である。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205622673664
  • NII Article ID
    130006982782
  • DOI
    10.11536/jsmez.54.0.70.0
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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