衛生動物毒素研究最近の進歩(クモ、サソリ、ハチ、クラゲ毒など)

  • 中島 暉躬
    「佐治敬三記念」(財)サントリー生物有機科学研究所

説明

我々は故加納六郎先生の薫陶をうけ、以前からフィールドワークを行い、噴出液で皮膚炎を起こすフトヤスデやサソリモドキ、野外で咬まれる被害のおおいカバキコマチグモ、眼障害を起こすヤマカガシ頸腺毒などの毒素の解明を行ってきた。これまで、このような人畜に被害を及ぼす小動物の毒の解明は、ヘビ毒、ミツバチ毒、スズメバチ毒など一般に毒素が比較的多量に集められる種類についての解析がなされており、毒性は強いが西表島のイリオモテジョウゴグモや硫黄島のマダラサソリのような稀少種、あるいは、毒の作用は大変に興味があるが材料の集まらない各種ベッコウバチ、トックリバチなど麻痺性神経毒をもつ孤立性のハチ、咬まれると大変痛いが小型のため毒液の採りにくいサシガメ、あるいは非常に毒素が不安定で精製の困難なクラゲ毒など、毒素は興味津々でも未解明のものが数多くあった。このため我々は、これらの未知の毒素をなんとかして知りたいと考え、主に、質量分析法を駆使する超微量解析法を確立させ、これによってここ数年の間に、このような本体が不明な動物毒を相次いで明らかにすることが出来るようになった。また、なぜ毒か?という疑問についても、それらの生体に対する作用が分子レベルで解析されるようになってきた。その結果、これらの未解明で新規な動物毒素の全体像が近い将来、俯瞰できるようになることを期待している。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205622982912
  • NII論文ID
    130006983137
  • DOI
    10.11536/jsmez.54.0.33.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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