蚊媒介病防除に関与する基礎的な問題

書誌事項

タイトル別名
  • Basic studies of the vector control and the prevention of mosquito borne diseases

説明

疾病の媒介蚊対策には様々な手法がある. しかしそのいずれにせよ、対象蚊の生態や習性、生理学的特性等を調査して知見を深め精選しなければ、広域での実用にはいたらない. 当然供試薬剤等の検討、さらには効果判定の手技向上も要求される. 防除の基盤を形成する諸問題の中から、2-3の調査成績を報告する. マラリア媒介蚊の経産蚊率の判定法は、1960年代Detinova等により開発されて以来、疫学的解析や効果判定に活用されることが期待された. ジャワ島南部のマラリア流行地で残留噴霧作戦を展開した際、経産蚊率と吸血飛来密度, 人血摂取率等に基づいて算出されたVectorial capacity (VC)値が噴霧の効果を適切に表現できることを明らかにした. 噴霧が効を奏すると測定計算値は100分の1以下に低下した. 住民の罹患率算定による従来からの評価法よりも遥かに簡易敏速に、かつ明確な評価が可能になった. 残留噴霧がマラリア対策に実施困難となると、代替えとして就寝時の蚊帳の利用が注目された. 特に殺虫剤を処理した蚊帳は各地で供され俯瞰たが、VC値を低下できない地域が多かった. またピレスロイド剤処理のwide-mesh netによるいわゆる「処理カーテン」は、熱帯地での壁面残留噴霧や蚊帳帳利用よりも簡易な成虫対策として検討されたが, 住民の日常生活に馴染むにはいたらない. しかしこの処理網を供した室内試験では、各種ピレスロイド剤による殺虫効果に加えて、蚊の侵入や吸血を忌避する反応、あるいは薬剤から迭避をする効果等を具現することができた. 原虫オオシスト保有蚊と非保有蚊の習性比較も可能であった. こうした防除対策は、当然対象蚊を特定することに始まる. 分類学や種の識別、各種の標本整備等の作業が重要な貢献をする所以である. 本邦で再興を危惧される感染症の対策も例外ではない. 現在は輸入症例を見るだけのマラリアやデング熱も、対策にあたるからには媒介蚊の形態を把握して同定を可能ならしめ、その分布や感受性等を充分に検討せねばならない. 媒介蚊の分布調査は継続中であるが、同時に各蚊種の標本を供覧しうるよう整備を進めている. とくに従来国内の研究機関に供託されたタイプ標本に関しては調査再記録をおこなっている. その一部山田信一郎博士記載の分は既にタイプ標本カタログとして刊行した.

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205622985728
  • NII論文ID
    130006983142
  • DOI
    10.11536/jsmez.54.0.34.0
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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