重症児・者に対する腹臥位姿勢の検討
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説明
【目的】<BR> 重度の脳原性運動障害を有する児・者は、筋緊張の異常、側弯などの骨格変形に関連する呼吸の問題を持つものが多い。また、加齢に伴う嚥下機能の低下により、問題が複雑かつ重篤な状況に進行していく。これらの状況に対して腹臥位姿勢を適応することにより状態の改善、悪化の予防が可能であるという報告が多くなされている。当センターでも重症児・者に対して、腹臥位の適応を行っており、入所の3症例に対し、腹臥位保持具を作製、あるいは作製中である。その過程で身体的側面から望ましい腹臥位姿勢を検討し、1症例において良い結果が出たので症例を通じて報告する。<BR>【症例と配慮点】<BR>症例1 17歳 女性<BR>脳性麻痺(痙直型四肢麻痺)でけいれん、反復性呼吸器感染、呼吸障害、摂食嚥下障害のため2003年10月から経鼻経管栄養開始、さらに胃食道逆流症のため2004年9月に胃瘻を設置する。高度側弯を有し、背臥位では頚部はやや左向きで常に後屈している。右凸Cカーブの側弯、両上肢屈曲位、下肢は左へwind blown している。間歇的に緊張が入りやすい。<BR>配慮点:全身の非対称を整え体幹を水平に保つ 胸部前面の圧分散<BR> 症例2 31歳 女性<BR>脳性麻痺でけいれんがあり、脳挫傷後の気管切開による呼吸管理を行っている。無気肺高炭酸血症を有する。股関節と膝関節には屈曲拘縮があり、左肩関節の外旋制限がある。<BR>配慮点:カニューレ 肩関節と股関節のROM制限<BR>症例3 19歳 男性<BR>溺水後脳症、けいれん、閉塞性呼吸障害、反復性呼吸器感染、摂食嚥下障害(経鼻経管栄養)、胃食道逆流症、高度側弯を有している。背臥位では、頚部左向き、後頚部は短縮している。下肢は左へwind blown している。<BR>配慮点:胸部前面の圧分散 下肢の動きを妨げない<BR>【症例1の結果】<BR>2004年5月から病棟、学校でも腹臥位を取り入れることにより、分泌物の誤嚥による咳き込みが減少し、リラックスできるようになった。胸部CTにおいて腹臥位導入前に見られた左下肺の陰影が縮小、改善した。呼吸器罹患率が減少した。<BR>【考察とまとめ】<BR>文献的には腹臥位姿勢の効用として、上気道の通過性の改善、胸郭背部に対する圧の除去による空気の流入の改善、痰、唾液などの分泌物による誤嚥の改善、血流と換気のバランスを改善する、胃食道逆流を起きにくくするなどが挙げられている。この効用を最大限に得るための腹臥位姿勢は、対象者の筋緊張の度合いや変形の状況によって異なっているが、いかにリラックスできるかが重要である。腹臥位姿勢をとらせるにあたっては、次の点を考慮した。(1)姿勢の安定性の確保 (2)頚部の筋緊張が緩和できる (3)胸郭前面にかかる圧の分散 (4)変形を悪化させない (5)動きを妨げない。<BR> 今後、長期的に効果を検証していくことが必要である。<BR>
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2005 (0), 36-36, 2005
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205623593088
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- NII論文ID
- 130006983836
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可