脳卒中患者の屋内歩行自立寄与因子と自立到達時期に関する一考察
説明
【目的】<BR> 脳卒中患者の屋内歩行自立に対する寄与因子と、入院から屋内歩行自立に達するまでの期間を分析し、入院早期から歩行能力に関して自立するまでの時期も含めた予後の判断基準を探ることを目的とする。<BR>【対象】<BR> 平成19年4月1日から21年1月31日迄に当院の回復期リハ病棟を退院した脳卒中患者の内、状態悪化等による転院者は除外し、調査及びデータ使用に同意の得られた537名(男性299名、女性238名、67.6±13.9歳)。なお、本研究を行うにあたり当院の倫理委員会の承諾を受けた。<BR>【方法】<BR> 診療録より属性項目(発症回数、発症から入院までの期間、入院期間、屋内歩行自立等)、入院時項目(Japan Coma Scale、Brunnstrom stage、非麻痺側下肢筋力、失調症状有無、起居動作・排尿自制能力等)のデータを後方視的に抽出した。認知症有はMMSE22点以下とし、動作能力は自立・見守り・介助・未実施の4段階で評価した。<BR> (1) 屋内歩行自立の寄与因子探索のための統計解析として、病棟歩行自立か否かの2値を目的変数とし、入院時項目を説明変数とした決定木分析を行った。(2) 入院から屋内歩行自立に達するまでの期間分析として、起居・移乗能力項目ごとにカプランマイヤー法によるログランク検定を用いて期間を算出した〔中央値(平均値±標準偏差)で表示〕。病棟歩行自立日をエンドポイントとし、屋内歩行自立に至らなかったものを打ち切りとして入院日数で統計処理した。統計解析には、JMPver5.0.1を用いて有意水準は5%未満とした。<BR>【結果】<BR> 発症から入院までの期間は34.4±14.1日、入院期間は83.4±41.8日、屋内歩行自立したものは348名(64.8%)であった。(1)決定木分析の結果、屋内歩行自立に寄与する因子として、第1ノードで入院時の座位能力が選択され(自立89.5%、非自立10.5%)、次いで尿意有、認知症なしが選択された。(2)ログランク検定の結果、座位能力の自立が24日(37.2±2.0)、見守りが114日(116.5±5.1)であった。立ち上がり能力の自立が11日(21.4±1.6)、見守りが71日(74.1±3.6)であった。移乗能力の自立が7日(16.9±2.4)、見守りが45日(52.1±2.7)であった。また、起居・移乗動作の各動作で、4段階(自立・見守り・介助・未実施)間に有意差を認めた(p<0.001)。<BR>【考察】<BR> 退院時に屋内歩行が自立したものの内、約9割が入院時の座位能力が自立しており、座位能力が屋内歩行自立するか否かの判断基準になると考えられた。屋内歩行自立までの時期は、動作レベルごとで差がみられた。座位能力において自立レベルであれば約1ヵ月以内での屋内歩行自立が可能であり、見守りレベルであれば自立までに約4ヵ月の期間を要すことが確認された。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2009 (0), 1-1, 2009
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205623619200
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- NII論文ID
- 130006983863
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可