足部障害と移動支持機能

DOI
  • 柚木 佑次郎
    医療法人南洲会 南洲整形外科病院 理学療法科
  • 山下 導人
    医療法人南洲会 南洲整形外科病院 理学療法科

抄録

【はじめに】<BR>足部は前足部・中足部・後足部の3つに分けられ、立位や歩行の移動支持機能に関与しており、その機能破綻は重大な障害を惹起しやすい。今回、前足部・後足部障害が移動支持に影響をおよぼす要因を検討したので報告する。<BR>【対象】<BR>足関節果部骨折10名(以下PO群)、平均年齢58.6歳:男性6、女性4名。関節リウマチによる三角扁平変形足、女性10名(以下AO群)、平均年齢64.6歳。対象群として健常人女性10名、平均年齢26.4歳。<BR>【方法】<BR>項目:筋力(足関節底屈筋力)、関節可動域(足関節底背屈)、10m歩行速度、重心動揺、重心位置を測定。方法:足関節底屈筋力は市販の体重計を用い等尺性収縮で左右2回行い平均値を採用。重心動揺はZebirs社製Foot Printにて足圧中心点の総軌跡長(SPL)、95%信頼区間で算出された楕円の長さ(AoE)を計測。又、重心位置は接地足底面の前後・左右の最長から百分率により各々の位置を測定。統計処理はPO群・AO群・対象群を一元配置の分散分析にて多重比較を行い、各々をTukey検定にて比較。PO群はマン・ホイットニ検定にて、患側と健側の比較も行った。測定項目間における各々の相関係数はPeasonの相関係数を用い、すべて有意水準5%未満とした。<BR>【結果】<BR>PO群:患側背屈可動域が対象群に比べ有意に低下。健側との比較では底屈筋力が有意に低く、背屈可動域は有意に制限。AO群:底屈筋力、10m歩行速度が有意に低下。重心動揺はSPLがAO群、PO群、健常群の順に有意に長かった(p>0.01)。重心位置は健常群に比してPO・AO群とも前方へ、PO群は健側へ変位する傾向にあった。3群すべてにおいて筋力とSPL・AoEに相関は認めなかった。<BR>【考察】<BR>今回、足部障害を前足部と後足部に分け重心動揺計による測定を行い、両者とも前足部での荷重支持がみられた。AO群では前足部へ過度の荷重が加わることで滑液嚢炎、胼胝の形成が悪化していると思われる。PO群において、後足部の安定にヒラメ筋が作用し、両脚立位保持には主に下腿三頭筋の筋活動が作用すると言われており、これら足関節底屈筋の弱化は重心位置が前方へ偏位する因子になり得る。重心動揺に関して、井上らは健常人13名の下腿三頭筋を最大等尺性筋力の50%になるまで疲労させる前後と重心動揺(総軌跡長cm)において有意差を認め、下腿三頭筋の筋力低下が立位重心動揺に影響することを報告しているが、今回の検討では重心動揺に関与する因子はつかめなかった。しかし両群とも足関節底屈筋力は有意に低下しており、それがもたらす足部アーチの低下は歩行における足圧の荷重経路、円滑な体重移動に影響をおよぼすと予測される。それらに対する足趾の背屈運動、足底パッドの挿入、足関節底屈筋力の再教育といった運動療法の重要性が伺える。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205623635584
  • NII論文ID
    130006983877
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2008.0.98.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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