脊柱起立筋の筋活動量と姿勢保持時間の比較

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  • 体幹挙上法と下肢挙上法で

抄録

【はじめに】<BR>体幹は四肢へ運動を伝達する中心で、特に脊柱起立筋は体幹安定に重要な役割を持つ。その筋力増強法として、体幹挙上と下肢挙上の2方法が臨床上よく用いられる。今回、どちらの方法がより脊柱を安定させる筋持久力を強化できるかを比較検討した。<BR>【対象】<BR>体幹伸展がMMT5で腰痛既往歴のない健常成人男性10名、女性10名を対象とした。平均年齢は25.6±4.0歳であった。<BR>【方法】<BR>測定肢位は、腹臥位にて下肢を固定し体幹を挙上させる方法と両下肢を挙上させる方法で評価した。これらはKraus-Weberテストに準じ、各姿勢保持が困難となる時間を計測した。またNicolet社製VikingNT表面筋電計を用い、電極をL1-2棘突起間両外側3cmに貼り、各肢位の安定が得られた後の10秒間の積分筋電図から40m秒あたりの平均筋活動量を算出した。測定は2回行い、再現性を確認した。統計学的検定には各運動の持続時間を比較するためt検定、2方法における筋活動量の関係をみるためPearsonの相関分析を用い、いずれも有意水準は5%とした。<BR>【結果】<BR>1) 下肢挙上テスト(83.2±41.5秒)の方が体幹挙上テスト(58.4±16.6秒)より持続時間が有意に長かった(P<0.01)。2)初期筋活動量は下肢挙上テストより体幹挙上テストの方が高い値を示し、体幹挙上テストと下肢挙上テストの筋活動量の間に相関が認められた(P<0.01、r=0.82)。<BR>【考察】<BR>腰痛の発生と体幹筋力の間には密接な関係があるといわれている。体幹の支持性が低下すると腰椎への負荷が増大し腰痛の原因と考えられる。そのため特に下部脊柱起立筋の筋持久力は重要であり、より効果的な訓練が求められる。今回、L1-2レベルの脊柱起立筋、つまり下部背筋の持続時間は体幹挙上テストより下肢挙上テストの方が有意に長く、運動開始時の筋活動量は体幹挙上テストの方が下肢挙上テストより有意に高かった。等尺性収縮の運動において、筋活動量が増加することで筋疲労は早く生じるため、下肢挙上テストより体幹挙上テストの方が下部腰椎の脊柱起立筋にかかる負荷は大きく、筋疲労が早かったことが示唆された。また、体幹挙上テストと下肢挙上テストの筋活動量の間に相関が認められたことで各被検者内に同じ変化が認められたことが示唆された。脊柱起立筋は体幹安定筋であり赤筋が多いとされるため、持続時間が長い訓練法が持久力強化には適していると考える。今回の結果より、腰痛と関連が深い脊柱起立筋の持久力の強化法として、体幹を挙上させる方法より下肢を挙上させ行う方法が筋持久力向上には有用であることが示唆された。今後はこのことを考慮した理学療法プログラムを検討し実施していきたい。<BR>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205623652096
  • NII論文ID
    130006983893
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2005.0.58.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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