シーティングによる快適な生活に向けて

書誌事項

タイトル別名
  • !) クッションの使用による腰痛軽減・ADLが向上した一例 !)

説明

【目的】<BR> 長期間、車椅子で日常生活を送っている患者の不良姿勢に着目した。不良姿勢での生活は腰痛、車椅子操作未獲得などADL・QOLの向上の妨げる要因となっている。そこで減圧クッション、体幹背部にクッションを使用によるシーティングアプローチを行い、安心・安全で快適な車椅子座位でのADL、QOL向上を目的に行った。<BR>【方法】<BR> 男性・84歳、診断名:脳梗塞後遺症、障害名:右片麻痺。BRS:U/E:II Finger:II L/E:II。寝返り・起き上がり:軽介助、端座位:近監視・胸腰円背。標準型車椅子での姿勢は矢状面において骨盤後傾、胸腰円背、頭部中間位といった仙骨座位でバックレストにもたれこんだ状態。前額面では正中線上において体幹右側屈となり、右側のアームレストにもたれる状態であり、腰痛の訴えが多い。車椅子駆動は、左上肢でハンドリムを押す際、適切にプッシュすることができない。また、足部で操作する際、骨盤後傾しているために足底接地が不十分である。15m直進の所要時間は約1分13秒、90度方向転換する所要時間は約25秒要し、鋭角に転換できず楕円状に転換する。移乗動作は中等度介助で、前方へ重心移動しようとするが骨盤後傾したままで胸腰円背を助長している。立ち上がり時、体幹伸筋群緊張が高くなり腰痛を助長している。そこで対象に対し、減圧クッション、体幹背部両側部に2本の円筒状のクッションを使用しシーティングを行った。腰痛、移乗動作の介助量、車椅子駆動を評価項目とし経過を追う。<BR>【結果】<BR> 初期時(から1W):矢状面では坐骨結節上に体重を乗せることができ、胸腰円背は改善した。前額面では体幹は正中線上に保持することが可能となった。1ヵ月後:移乗動作は、中等度介助ではあるが骨盤帯からの前傾姿勢が可能な状態へと近づき、動作もスムーズになる。その際、腰痛はほぼ消失している。車椅子駆動は特に変化はない。3ヵ月後:移乗動作は立ち上がり時、近監視で方向転換時のみ介助を要す。車椅子駆動は直進の所要時間は約1分。方向転換は楕円状であるが、約20秒と若干短縮できた。腰痛は日常生活上、訴えることはなくなった。<BR>【考察】<BR> Engstromは人の活動に最適な状態で座るには(1)安定した支持面(2)圧の分散(3)体幹を前傾させる能力(4)姿勢の変化(5)背部のサポート(6)足部の自由度(7)安全・安心をあげている。今回の研究で、移乗動作の向上、車椅子駆動能力の向上、腰痛軽減が見られた。シーティングにより骨盤後傾、胸腰円背、体幹右側屈は改善し、安定性が増した。移乗動作時、体幹を前傾させる能力を獲得したことにより介助量が軽減したと考える。車椅子駆動は、若干体幹前傾姿勢となり、足部での操作が向上したと考える。<BR>【まとめ】<BR> クッションは不良姿勢の改善に有効である。不良姿勢を改善することは腰痛の緩和や車椅子駆動・移乗動作などADL・QOLの向上に効果的であったといえる。

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キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205623689216
  • NII論文ID
    130006983933
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2005.0.71.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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