手指PIP関節側副靭帯完全断裂修復術後のセラピィ

説明

【はじめに】<BR> 手指の側副靭帯損傷後のセラピィでは、損傷関節の良好な側方安定性と可動性が要求される。当院におけるPIP関節側副靭帯完全断裂修復術後のセラピィを紹介し、若干の考察を加えて報告する。<BR>【対象】<BR> 2003年4月からの3年間に処方されたPIP関節側副靭帯完全断裂修復術後23例24指のうち2ヶ月以上経過観察が可能であった16例17指を対象とした。手術時年齢14歳から74歳(平均38.3歳)、断裂靭帯は中指橈側5指、環指橈側3指、小指橈側8指・尺側1指であった。受傷原因はスポーツ損傷9例、転倒・落6例、その他1例であった。新鮮例13指は靭帯縫合術、陳旧例の4指は一側の浅指屈筋腱を用いた靭帯再建術を施行し、PIP関節10から15度屈曲位で2週間安静固定した。<BR>【術後セラピィ】<BR> 術後早期からMP、DIP関節自・他動運動と修復側の内外転筋の強化を行った。術後2週からbuddy splintを用いた指全関節の自動運動を行わせ、徒手的にPIP関節伸展0度までの他動運動とPIP関節最大自動屈曲位でのDIP関節他動屈曲運動(側索の掌側滑動運動)を行った。術後5から6週より必要に応じてPIP関節の他動運動を開始した。buddy splintは基本的にスポーツ施行時および示・中指橈側断裂例では術後3ヶ月、それ以外は術後6週間装着させた。<BR>【結果】<BR> StricklandによるPIP、DIP関節自動可動域の評価では73%から94%(平均85%)で、優10指、良7指であった。屈曲可動域は良好であったが、PIP関節の10度前後の屈曲拘縮例が散在した(良指は全指)。PIP関節側方不安定例はなかった。<BR>【考察】<BR> PIP関節側副靭帯完全断裂修復術後は安静固定期間中に修復靭帯を中心とした関節性拘縮や修復靭帯と側索および支靭帯の癒着によるPIP、DIP関節の屈曲、伸展制限が発生する。そのため修復靭帯の治癒過程を考慮しながら、如何にして拘縮が不完全な術後早期に可動性を獲得させるかが大切である。術後早期からのDIP関節自・他動運動は関節性拘縮の予防だけでなく、支靭帯を伸張し、側索を滑動させることができるため重要と考えている。術後2週からの側索の掌側滑動運動により屈曲可動域は比較的容易に獲得できた。手指側副靭帯損傷例では掌側板損傷を合併するために軽度屈曲位で安静固定するのが一般的であり、PIP関節では側副靭帯扇状部、掌側板、手綱靭帯などによる屈曲拘縮が発生する。それに対しては術後2週から関節の形状により側方安定性が得られ、背側不安定性を予防した伸展0度までの他動運動を行い矯正したが、運動時以外は屈筋の緊張で屈曲位になるためか、最終的に屈曲拘縮例が散在した。そのため最近の症例ではPIP関節0度伸展位の静的夜間splintを利用して良好な伸展可動域が獲得できている。PIP関節屈曲拘縮に対しては、術後2週からのPIP関節伸展0度までの他動伸展運動とPIP関節0度伸展位の静的夜間splintが有効と考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205624003328
  • NII論文ID
    130006984203
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2006.0.26.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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