手指伸筋腱皮下断裂例に対する減張位早期運動療法の経験
説明
【はじめに】<BR> 慢性関節リウマチ(以下RA)の手関節病変では、背側脱臼した尺骨頭によって伸筋腱が第4コンパートメント内で小指より順に断裂する事が散見される。手術では隣接する伸筋腱に端側縫合されるか、または橋渡し腱移植術にて再建される。日常生活動作(以下ADL)能力の拡大を図るには、再建術とともに術後セラピィが重要である。今回、手指伸筋腱皮下断裂修復後の早期運動療法を経験したので結果を報告する。 <BR>【症例と術中所見】<BR> 70歳代、女性。6年前より右手関節部痛あり。環・小指の伸展障害あり近医受診し、当院紹介入院となる。手術ではまずSauve-Kapandji法による手関節形成術を施行した。次に伸筋腱は環指・小指が完全断裂、中指も部分断裂していたため、それぞれの伸筋腱において小指を環指へ、環指を中指へ端側縫合し、また中指の部分断裂部位には同側の長掌筋腱を採取して縫合し、補強を行った。<BR>【術後セラピィと経過】<BR> 術後翌日に手関節はリストサポーターにより固定し、手指は尺側指から順に橈側隣接指にoverlapさせた肢位でテーピング固定する減張位とした。早期運動はセラピスト操作下にて、手関節中間位で手指他動伸展位を保持するholding運動と手関節30度背屈位での手指自動屈曲運動を行った。術後3週でテーピングを除去して手指の自動屈曲・伸展運動開始した。術後6週まで夜間静的スプリント(手関節中間位・手指伸展位)を装着させ、その後は原疾患であるRAに対する指導を行いながらADLでの患肢の使用を徐々に進めていった。<BR>【結果】<BR> 術後12週時の%TAMは中指89.8%、環指71.3%、小指96.4%であった。TAF時のMP関節屈曲は、中指84°、環指92°、小指76°であった。TAE時のMP関節伸展は、中指-18°、環指-16°、小指-6°。握力は健側比100%であった。<BR>【考察】<BR> 減張位早期運動療法は、断裂した伸筋腱を橈側隣接指の伸筋腱に縫合する腱移行術後、患指を尺側指より順にoverlapさせた指位でテーピング固定することで、腱縫合部に負担をかけない状態で自動運動を行う方法である。しかし、本症例は動作筋である中指の伸筋腱も部分断裂しており、長掌筋腱で補強されたものの通常の運動方法では中指の伸筋腱への負荷が大きすぎると考えた。そのため自動伸展運動は、手関節中間位にて手指他動伸展位を保持するholding運動とし、近位方向への腱滑走を促した。今回の結果ADL動作において十分な手指の可動域と握力は獲得されたが、小指のMP関節の屈曲は他指に比較して制限が認められた。減張位早期運動療法のテーピング固定下では小指の屈曲可動域獲得は不利な状況にあるため、今後は小指MP関節屈曲可動域の改善の工夫が必要と考えられた。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2009 (0), 219-219, 2009
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205624019456
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- NII論文ID
- 130006984232
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可