片麻痺患者における足関節背屈時の筋緊張の定量化

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  • ハンドヘルドダイナモメーターを用いて

抄録

<br>【目的】<br>筋緊張の臨床評価にはModified Ashworth clinical Scale(以下MAS)が広く用いられているが、主観 的評価であり、客観的評価としては、KIN-COMなどを用 いた先行研究があるが、機器が高額であること、設定や 測定に時間がかかるなどの問題により一般化されていな い。今回、我々は簡便なHand-Held Dynamometer(以下 HHD)用いて、足関節他動背屈時の筋緊張の定量化を 試みた。<br> 【対象および方法】<br>対象:健常者14名(男性4名、女性 10名)、片麻痺患者22名(男性11名、女性11名、右片 麻痺13名、左片麻痺9名)である。下肢疾患の既往がな く、足関節背屈可動域が0°以上あることを条件とする。 方法:被験者は安静臥位(A:膝下に台を置いた股・膝関 節屈曲位。B:下肢伸展位)をとり、HHD(日本メディックス 社製PowerTrackII)を被験者の足底に当て、足関節0° 間で他動背屈運動を行った。A、Bの条件において左右 各4回行い、平均値を評価値とした(単位:N)。統計処 理は一標本t検定を用いた。<br> 【結果】<br>健常群の、膝屈曲位では右21.3±8.5N、左19.4 ±7.9N。伸展位では右42.3±15.9N、左40.1±15.6Nで あり、左右に有意な差を認めなかった。 片麻痺患者群の、膝屈曲位では麻痺側24.9±16.2N、 非麻痺側18.3±10.2N。伸展位では麻痺側48.3±27.2N 非麻痺側が33.5±15.5Nであり、麻痺側が有意に高かっ た。健常群・片麻痺患者群ともに膝屈曲位に比べ、伸展 位の方が有意に高かった。<br> 【考察】<br>筋緊張とは一般的に、随意運動のない状態で筋 を他動的に伸張した時の抵抗であるとされている。筋緊 張亢進の要因として、伸張反射由来の反射性要素と、関 節周囲組織の弾性力低下由来の非反射性要素の2つが あり、今回の研究では、伸張反射が出現しない速度で計 測を行っており、非反射性要素による筋緊張亢進状態を 表したものと考える。 我々は臨床場面において、片麻痺患者の非麻痺側に比 べ、麻痺側の筋緊張が亢進していることを経験する。今 回の結果は、この主観的印象を客観的に表示したものと 考えられ、その原因は、痙性や不動に伴う関節周囲組織 の弾性力低下と考える。また、健常群、片麻痺患者群と もに、膝伸展位での値が屈曲位に比べ高値であったこと は、二関節筋である腓腹筋の伸張抵抗によるものと考え られ、HHDによって筋の伸張抵抗を定量化できたものと 考える。<br> 【まとめ】<br>(1)HHDを使用し、足関節他動背屈時の抵抗 を測定した。(2)健常群では左右差は認めなかったが、 片麻痺患者群では、麻痺側が有意に増大した。(3)膝関 節屈曲位より伸展位で伸張抵抗が有意に増大した。(4) HHDを用いた足関節背屈時の筋緊張定量化の有用性 が示唆された。<br>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205624032384
  • NII論文ID
    130006984254
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2006.0.55.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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