透析中の運動療法を導入した慢性腎不全患者の一症例
説明
【はじめに】<br> 近年、維持透析患者に対し「腎臓リハヒ゛リテーション」が提唱され、積極的に運動療法を取り入れる医療機関は増加傾向にあるが、確立した「腎臓リハ」の指針はまだない。<br>今回、平成19年7月より透析前・透析中の運動療法を開始し、現在も継続できている症例について報告する。<br>【症例紹介】<br> 70代男性、糖尿病性腎症による慢性腎不全にて平成18年より維持透析導入。ADLはすべて自立。<br>【実施内容】<br> 透析前に20分のストレッチと機器を用いた筋力トレーニンク゛、透析開始1時間後から20分の下肢エルコ゛メーターを実施した。運動強度についてはAT1分前の脈拍、またはホ゛ルク゛指数12~13以下とし、透析中は心電図モニター監視下にリスク管理を行った。頻度は外来透析日に週3回実施した。<br>【評価】<br> 評価項目は、柔軟性の指標としてChair sit and reach test、筋力の指標として膝伸展筋力(HUR社製レック゛エクステンション・カール)、握力、歩行能力を10m歩行スヒ゜ート゛テスト、ハ゛ランスを片脚立位、運動耐容能を心肺運動負荷試験(以下CPX)(ミナト医科学社製エアロモニタAE-310S)で評価した。またQOLの評価はSF-36を用いた。運動療法導入時からCPXは半年、その他の評価項目は3ヶ月毎に再評価した。<br>【結果】<br> 各評価項目について初期・最終評価の結果を順に示す。<br>柔軟性:-18cm 1cm、膝伸展筋力:115Nm 125Nm、握力:34Kg 36Kg、10m歩行:5.39秒 5.44秒、片脚立位:30秒 30秒、CPX(AT時運動強度):3.2METs 2.7METs。SF‐36《身体機能:65 70 日常役割機能 (身体):38 63 体の痛み:100 100 全体的健康感:32 77 活力:44 56 社会生活機能:25 25 日常役割機能(精神):100 100 心の健康:55 75》<br>【考察】<br> 近年、維持透析患者に対し「腎臓リハヒ゛リテーション」が提唱され、適度な運動療法を実施することで筋力の増大、運動耐容能やADL・QOLが向上することが報告されている。<br>維持透析患者では腎性貧血、筋蛋白の異化亢進、低栄養など、筋力トレーニンク゛に関しては不利な面が多いといわれているものの、適切な負荷による長期間のトレーニンク゛の継続、および動機付けにより、本症例において筋力の増大が図れたものと考える。<br> 運動耐容能に関しては、明らかな効果は得られなかった。これは訓練に使用した機器の限界で、重錘ハ゛ント゛で補うも十分な負荷をかけることができなかったためと考える。<br> 現在、エルコ゛メーターについては負荷調整可能な機器の導入を検討中であり、今後はCPXによる運動処方・適切な負荷による効果的な運動療法をすすめていきたい。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2009 (0), 167-167, 2009
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205624040960
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- NII論文ID
- 130006984267
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可