橈骨遠位端骨折の機能予後に関する因子の検討

  • 西牟田 亮
    社会医療法人 緑泉会 まろにえリハビリテーションクリニック
  • 竹山 志之
    社会医療法人 緑泉会 まろにえリハビリテーションクリニック
  • 田中 祐一
    社会医療法人 緑泉会 まろにえリハビリテーションクリニック

Bibliographic Information

Other Title
  • ~保存療法における単純X線画像を基に~

Description

【はじめに】<BR> 橈骨遠位端骨折において整復後、橈骨遠位端の手根関節面に対するアライメント(以下、橈骨アライメント)は一般的に手関節の機能予後に関与するといわれており、その中でも可動域制限が及ぼすADL動作への影響は大きい。今回、徒手整復を行った橈骨遠位端骨折の単純X線画像から、橈骨アライメントが手関節可動域に及ぼす影響について調査し若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象と方法】<BR> 平成17年7月から21年2月に当院受診し、橈骨遠位端骨折と診断され保存療法の下、リハビリテーションを実施した者のうち、受傷より8週以上追跡調査可能であった24例(男性4例、女性20例、平均年齢67.4±8.1歳)を対象とした。骨折型の内訳はColles骨折20例、背側Barton骨折3例、Smith骨折1例であった。<BR> 単純X線画像から、橈骨アライメント所見として、背側傾斜角Dorsal tilt(以下DT)、橈骨尺骨長差Ulnar Variance(以下UV)を計測し、手関節可動域として掌屈、背屈の可動域とのそれぞれの相関を求めた。統計処理としてPearsonの相関係数を用いて検討した。<BR>【結果】<BR> 各平均値は、DT 7.4±9.5°(-11~26°)、UV 1.9±2.7mm(-2~7mm)、掌屈 57.7±14.2°(25~85°)、背屈 68.8±16.3°(30~90°)であった。各項目の相関においてDTとの間には掌屈、背屈いずれの項目でも有意な相関は認められず、UVとの間には掌屈では相関は認められなかったが、背屈で(r=-0.62,p<0.01)と有意な負の相関が認められた。<BR>【考察】<BR> DTにおいては関節面の背側偏移に伴い、相対的な掌屈制限を生じるものと予測したが、その関連性を示すことはできなかった。一般的にDTは20°以上で予後不良といわれており、本研究対象のDTにおいては整復が比較的良好なことにより関連性が示されなかったことが示唆される。<BR> UVにおいては骨折後の橈骨短縮によるUVの増大により、背屈の可動域制限が残存しやすい傾向にあることが認められた。香月はplus varianceの増大により月状骨の圧集中部位が橈骨関節面からTFCCへと移動することが示されたと報告している。UVの増大は橈骨手根関節の橈屈偏移を招き、橈骨手根関節の背屈において連携作用として起こる近位手根骨の内転運動を妨げるものと考える。また、橈骨手根関節の橈屈偏移に伴い、月状骨の接触面は尺側へ移動し、手根骨関節窩へは舟状骨の圧集中が起こり、橈骨手根関節では舟状骨による運動が優位に反映されることが予測できる。正常な背屈運動では、舟状骨は橈骨舟状骨靱帯と舟状大菱形骨靱帯の緊張により、月状骨より早期に背屈運動を停止し、その後は月状骨による運動が続行されるが、UVの増大に伴い、舟状骨での運動が優位となった橈骨手根関節では舟状骨と月状骨の連携作用の破綻が起こり、可動域制限を生じることが考えられる。<BR> 橈骨遠位端骨折による可動域制限は浮腫の程度や合併症の有無など様々な関与が考えられるが、今回の結果では橈骨アライメントと手関節の機能予後とを関連付ける一因子であることが示唆される。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205624058624
  • NII Article ID
    130006984296
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2009.0.190.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top