股関節機能的回旋運動が股関節可動域に及ぼす影響について
Description
【はじめに】 <BR> 臨床においてスポーツ障害を有する選手は二関節筋の過剰活動と単関節筋の機能低下があると考えられ、このような症例で見られる筋の高い緊張が関節可動域制限の一要因になると考えられる。今回我々は単関節筋の賦活を目的に回旋筋群と腸腰筋に対する選択的トレーニング法を考案し股関節機能の中で、関節可動域に対してどのような影響を与えるか検討したのでここに報告する。 <BR> 【方法】 <BR> 対象は股関節に障害のない男性10股、女性10股の計20股であり、年齢は24±1.29歳であった。始めに股関節可動域測定を自動可動域(測定方法A)・他動可動域(測定方法B)にて行い、次に後述する股関節機能的回旋訓練(以下、Ex)を行う。その後、前述の可動域測定をEx直後・1日後・3日後に行い、効果を検討する。(測定方法A)屈曲・内旋・外旋可動域測定を行う。屈曲は立位で両踵を壁から5cm離し身体背面が壁に触れないように行う。回旋は座位で腕を組み股、膝関節90°屈曲位をとり、股関節内外転中間位で行う。(測定方法B)他動関節可動域測定は日整会の方法に則った股関節屈曲・内旋・外旋可動域測定と下肢伸展挙上(以下、SLR)角度測定を行う。(Ex方法)背臥位で片脚を股関節・膝関節90°屈曲位として下腿脛骨粗面直下にスリングを巻き、スリングの紐が床と垂直になるようにしながら股関節の内外旋運動を10分間行う。統計処理は対応のあるt検定を行った。 <BR> 【結果】 <BR> A)自動屈曲ではEx直後・1日後・3日後で、自動内外旋ではEx後で有意な可動域増大が見られた(p<0.01)。B)他動屈曲ではEx直後で、SLRではEx直後・3日後で有意な可動域増大が見られた(p<0.01)。他動内旋ではEx直後・1日後・3日後で、他動外旋ではEx直後・3日後で有意な可動域増大が見られた(<0.05)。 <BR> 【考察】 <BR> 股関節屈曲運動において、二関節筋である大腿直筋が過剰に活動する例ではハムストリングスの活動も強くなり、股関節伸展作用が生じて屈曲パフォーマンスは阻害される。また二関節筋優位の関節運動では関節にかかる軸圧が不安定となり関節不安定性が生じると考えられる。よって安定性を高める代償としてすべての単関節筋が同時収縮して関節を固めて関節安定性を代償しようとするのではないかと考えた。これが長く続くと筋紡錘の感度が高まり、少しの伸張で筋が収縮して他動可動域制限を起こす事や相反神経機構の破綻が引き起こることも考えられる。これを改善するために考案した「股関節機能的回旋Ex」は股関節回旋筋群の相反神経機構に対する働きかけや単関節筋の賦活を目的としており、その作用が自動屈曲や内外旋可動域向上に貢献していると考える。また回旋筋群を協調的に用いることで筋紡錘の感度が改善されて他動内外旋可動域向上が見られたと考えた。関節可動域改善ではストレッチやモビライゼーションが主として行われるが、筋の緊張が高いケースでは有効なExであることが考えられる。今後このExの有用性をより追及して下肢障害予防の一手法として取り入れていきたいと考える。 <BR> 【まとめ】 <BR> ・股関節単関節筋に着目してExを考案した。 <BR> ・単関節運動が可動域向上に有効な事が示唆された。 <BR> ・今後実際の動作への影響について検討する。
Journal
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- Proceedings of Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
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Proceedings of Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu 2006 (0), 3-3, 2006
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
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Details 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205624069760
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- NII Article ID
- 130006984311
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- Text Lang
- ja
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- Data Source
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- JaLC
- CiNii Articles
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- Abstract License Flag
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