精神科における家族支援

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  • 家族教室を通して

抄録

【はじめに】<BR> 日本は,諸外国に比べ,精神疾患を有する当事者と同居する家族が多い.家族が効果的な介入法を知ることは,家族の負担の軽減と同時に,当事者の回復を促す一助となる.当院では,家族支援の一環として,家族教室を実施した.その概要に考察を加え,ここに報告する.<BR>【対象・方法】<BR>  対象は,当院に入院・通院中の当事者がいる家族の中で,家族教室への参加を希望された14世帯19名.1世帯より複数名の参加や当事者の参加も受け入れた.主な診断名は統合失調症である.グループは,途中参加・リタイアも受け入れるセミクローズドグループで実施した.疾患についての情報提供に加え,問題解決技法によるグループワークを月に1度2時間を目安に全12回実施した.<BR>【結果】<BR>  家族教室に毎回参加したのは1世帯1名.1回のみの参加は7世帯8名であった.相談内容は,自宅での過ごし方や当事者との距離のとり方など様々であった.開始直後には,家族同士の交流は少なかったが,回数を重ねるにつれ,家族同士で意見を言い合う場面もみられるようになった.しかし、多くの場合,医療従事者に対し「質問を行う」という形式になりやすく,十分にピアの力を活かすことはできなかった.また,家族教室内で相談された内容を治療に活かすことができず,何度も同じ相談ごとを行う家族もいた.<BR>【考察】<BR>  今回の家族教室は,枠組みが緩やかであり,参加者のニーズを十分に把握することが出来なかった.さらに,十分なオリエンテーションを受けることなく「試しに参加してみよう」と考え参加に至った家族もいたと考えられる.そのため,多くの参加者が定着することなく,1回のみの参加であったのではないか.家族は,病院職員以上に,生活者としての当事者を知っており,当事者の支援を行う上で重要な情報をたくさん持っている.家族教室では,家族の力を活かすことができるように,家族自身の対処能力の向上を目指していたが,「医療従事者から,最も効果的である(と思われる)介入法を教えてもらいたい」と考える家族が多く,家族の相互交流よりも,医療従事者と家族の会話が多かったのではないかと感じる.当事者・家族は治療・援助が必要な対象ではなく,共に治療に取り組むパートナーであるということをスタッフは意識し,それぞれの対処能力の向上を目指す働きかけが必要なのではないだろうか.今後、課題を整理しよりよい関係を築くことが出来るよう努力していきたい.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205624118528
  • NII論文ID
    130006984386
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2009.0.30.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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