ストレッチング施行による自律神経活動の変化

Description

【目的】<BR> ストレッチングの目的として、筋肉の緊張を和らげ心身に対するリラクゼーション効果があることが報告されている。しかし、リラクゼーションの指標と自律神経活動を用い、ストレッチングとの関係を報告した例は少ない。また、ストレッチング部位の違いとリラクゼーションとの関係も明らかとなっていない。本研究では, 健常者を対象にストレッチングを施行し、施行部位の違いが自律神経機能に及ぼす変化について検討した。<BR>【方法】<BR> 対象者は健常女性3名(20.3±1.6歳)。研究の主旨を十分に説明し,自主的な参加の同意を得た者とした。実験手順は、対象者に対し心電図の電極を第II誘導で設置し、メモリー心拍計(アクティブトレーサーAC-301A)にて心電図R-R間隔を記録した。計測はベット上仰臥位にて30分の安静を保った後、研究者によるストレッチングを20秒間施行、その後15分間の安静背臥位姿勢までの期間とした。ストレッチングの施行課題は右僧帽筋上部線維(以下UT)と右大腿二頭筋(以下BF)とし、施行順序はランダムで行ない双方の影響が残らないよう同日以外での施行した。ストレッチングの強度は、対象者の疼痛が生じない範囲にて施行筋に対する伸張感覚が得られる程度とした。解析はMemCalc法にて、心電図R-R間隔による周波数解析を行なった。サンプリング周波数は0.04~0.15Hzを低周波成分Low Frequency(以下LF)0.15~0.40Hzを高周波成分High Frequency(以下HF)とした。HF成分は心臓迷走感神経の指標とされている。対象者ごとのHFを標準化するため、全周波数帯に占めるHFを%HFとし心臓迷走神経の指標とした。交感神経の指標としてはLF/HFを用いた。それぞれのストレッチングによる%HF、LF/HFの比較においては、ストレッチング施行前安静位での平均値を基準として、ストレッチング施行後0~5分間、5~10分間、10~15分間での平均値との比較を行なった。<BR>【結果】<BR> 今回の実験において、各筋における%HF、LF/HFの統計的有意差は認められなかった。しかし、ストレッチング施行による自律神経の推移として、UTに対する%HFは施行前基準値に対し、各対象者ともに上昇する変動が見られ、施行後5~10分にてピークを示し10~15分においても基準値より高位となっていた。UTでのLF/HFでは、施行前基準値に対し各被検者ともに減少を示した。BFでの%HFおよびLF/HFは、施行前基準値と比較して対象者間でのばらつきが大きく、基準値よりの上昇は確認できなかった。<BR>【考察】<BR> UTとBFに対するストレッチング施行による自律神経の変化において、UTが%HFの上昇とLF/HFの減少より、副交感神経系である心臓迷走神経が優位となる傾向を示した。BFについては副交感神経の優位な変化は見られなかった。UTに対するストレッチングでは筋伸張に伴うリラクゼーション効果にくわえ、頚部に位置する迷走神経背側核への刺激につながり、迷走神経を刺激した可能性も考えられる。今回の傾向より対象者を増やし更なる検討が必要と考える。

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205624275456
  • NII Article ID
    130006984503
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2009.0.45.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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