スワンネック変形があり手指の運動が困難な症例に対するアプローチ
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説明
【はじめに】<BR> 今回,左手指にスワンネック変形があり手指屈曲時に近位指節間関節(以下,PIP関節)の屈曲が見られず手指操作が困難なパーキンソン病患者を担当した.治療後にPIP関節の屈曲が可能になり,ADLでの上肢使用の増加を経験したので報告する.<BR>【症例紹介】<BR> 70代女性.2年前から徐々に左手指の示指~小指までがスワンネック変形となった.示指はPIP関節の伸展拘縮著明で屈曲方向の関節運動は困難.中指~小指のPIP関節は他動運動での屈曲は可能だが,運動時に強い抵抗を感じる.自動運動での手指屈曲は中手指節間関節(以下,MP関節)の屈曲のみでPIP関節は過伸展となる.PIP関節は他動運動時の運動の有無,運動方向の知覚は正常であるが,自動運動では「曲げることができない」と認識している.ADLでの左上肢の使用は殆ど見られず,使えない手と認識している.右手指に変形はない.<BR>【病態解釈】<BR> 他動運動での示指以外のPIP関節の屈曲は可能であることから,中~小指の関節構造上の問題は無いにもかかわらず,自動運動時の屈曲運動はMP関節のみで,PIP関節は過伸展し,本人も「曲げることが出来ない」と認識している.またMP関節のみの運動であるために把持が困難となり,掴むために筋緊張を高めることにより,PIP関節が過伸展するという悪循環が起こっていると考える.このことから何らかの理由で手指屈曲時の運動プログラムが変性し,PIP関節が運動に参加しなくなり,本人も「曲がらない」と認識しているために運動プログラムの自己修正がされないと考える.<BR>【訓練仮説】<BR> 左手指のPIP関節の関節構造や知覚には問題が無いにも関わらず,手指屈曲時にPIP関節が運動に参加せず,本人も「曲げることが出来ない」と認識している.このことからPIP関節が屈曲方向へ曲がることを認識し,運動方法を再学習することで自動運動が可能と考える.また右手指は正常な運動を行えるため,右手指の運動を参考にすることが有効と考える.<BR>【訓練】<BR> 1.左手指のPIP関節の他動運動での屈曲を視覚で確認し,関節が動くことを認識する.2.右手指屈曲時と左手指屈曲時の力を入れている場所の比較,手指の関節の動く順番の比較を行う.3.右手指での運動を同様に左手指で行うイメージをし,その後イメージと同様に実際に動かす.<BR>【結果】<BR> 訓練を3日間行うことによって,伸展拘縮が見られた示指以外は自動運動時にPIP関節の屈曲が可能となった.またADL場面でも左上肢が動いて左にあるものを掴もうとする,お茶碗を左上肢で持つなど徐々に運動への参加が見られるようになった.<BR>【考察】<BR> 症例はPIP関節の運動方法が分からず,動かないと認識していたために非効率な運動を行なっていたと考える.また高次脳障害や感覚障害などが無かったために,右上肢の運動を参考にすることで左手指の動かし方に気付き,正しい運動を認識することで短時間に運動の変化が見られたと考える.
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2007 (0), 126-126, 2007
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205624371328
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- NII論文ID
- 130006984607
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可