Zone2示指屈筋腱損傷例の3週間固定法における術後PIP関節伸展位固定の検討

Description

【はじめに】<BR> Zone2指屈筋腱損傷例の術後の問題点は,自動屈曲不足とPIP関節屈曲拘縮である.今回,pinch動作を主な役割とする示指の屈筋腱損傷例に対して術後PIP関節を可能な限りの伸展位固定とした3例を経験したので検討し報告する.本報告において3例からの同意は得た.<BR>【症例紹介・経過】<BR> 症例1:30代,女性,機械に巻き込まれて受傷し,右示指浅指屈筋腱(以下FDS)・深指屈筋腱(以下FDP)・尺側動脈・神経の完全断裂であった.症例2:40代,男性,草刈り機に手が当たり受傷し,左示指FDS・FDP・両側動脈・神経の完全断裂に加え,母指基節骨基部での完全切断を合併していた.症例3:50代,男性,牛の爪を切る際に誤って受傷し,右示指FDP・両側動脈・神経の完全断裂,FDSは腱交叉部で部分断裂していた.症例1は挫滅創で腱断端部はささくれており,症例2・3は比較的clean cut損傷であった.3例とも腱を吉津法,動脈・神経を顕微鏡下にて縫合した.症例2は母指再接着術を行い,症例3のFDSは放置した.術後は腱縫合不全の危険性や両側動脈損傷を考慮して3週間固定法を選択し,固定肢位は手関節中間位,MP関節60度屈曲位,PIP関節は縫合組織に伸張が加わらない最大限の伸展位固定にて背側シーネを行った.3例とも術後1週経過時に術後固定肢位の背側splintに変更し,3週経過時以降は通常のセラピィと特に指腹pinch獲得を目標としたFDS単独の近位滑走訓練を行った.症例1はPIP関節屈曲拘縮を呈したため術後5週経過時にPIP関節伸展用動的splintを導入した.<BR>【結果】<BR> 最終時の%TAMは,症例1・2・3の順に77.6%・82.7%・80.8%で,PIP関節他動伸展角度は3例とも0度で関節拘縮はなかった.症例1は,腱縫合部での強固な癒着によりMP関節の屈曲拘縮が生じたため腱剥離術を施行した.全例自動屈曲不足が僅かに残存したものの日常生活や仕事に支障はなく社会復帰した.<BR>【考察】<BR> 今回の3例は,PIP関節を伸展位固定することでPIP関節屈曲拘縮を最小限に予防できたが,腱縫合部がより遠位で癒着したため2割程度の自動屈曲不足を残す結果となった.指列の特性から示指は,基本的にgrip動作をあまり必要とせずpinch動作を主な役割とするため,3例の僅かな自動屈曲不足は問題とならず社会復帰が可能となったと考えている.このことからZone2指屈筋腱損傷例の3週間固定法における術後のPIP関節固定肢位は,指列の特性により橈側指は可及的に伸展位とし,尺側指はgrip動作を考慮して屈曲位にすることが一方法かもしれない.しかし症例1のような高エネルギー損傷例は,MP関節屈曲拘縮に対して腱剥離術を施行しており,PIP関節だけでなく隣接関節の屈曲拘縮も予防する必要性を痛感した.

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390001205624668288
  • NII Article ID
    130006984894
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2011.0.27.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top