軽度発達障害を持つ子どもの支援

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タイトル別名
  • ~ことばの不明瞭さを主訴に訪れたケースをとおして~

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説明

【目的】<BR> 構音の不明瞭さを主訴に療育機関を訪れるケースではアスペルガー症候群や高機能自閉症、学習障害、ADHDなどの軽度発達障害を併せ持つ子どもが多数いる。<BR> 当院での4年間の推移をみると、ことばを主訴に訪れた子どもの71%が軽度発達障害の診断を受けている。当院では軽度発達障害が疑われる場合、作業療法士(以下OTとする)と言語聴覚士(以下STとする)が協同で行動観察、発達評価を行い、具体的な支援を行っていく。今回はことばを主訴に訪れたケースにおいてOTが評価、介入する事でことばの問題の背景にある軽度発達障害の特性を捉えた療育が可能となったケースを報告する。<BR>【方法】<BR> 個別療育にて問診(生育歴、S-M社会生活能力検査、JSI-R)、SCSIT、臨床観察(手指判別、SBC、SBO、IP、BMC)、言語発達評価(やりとりの評価、構音検査)、フォーマルな検査(WISC)などの評価を行う。<BR>【結果】<BR> 全員(4人)に共通してみられた点として行為機能の苦手さ、協調的な運動面の遅れ、前庭、固有覚のSenssory Needs、構音の不明瞭さ(歯茎摩擦音の置換や歪み、)自由会話における伝達のしにくさがあげられる。また、発達歴の特徴的なエピソードや ADLの遅れ、感覚の偏りは3人の子どもに優位にみられ、K-ABCにおいて継次処理と同時処理および習得度に不等号が付く、もしくはWISCにおいて言語性課題(知識、理解の項目)で特徴的な面が2人の子どもにみられた。<BR>【考察】<BR> 就学時健診にて構音の不明瞭さを指摘されたため、ことばの発音を良くしたいという目的で養育者はSTのみを希望することが多い。しかし、OTとの協同の評価(SI検査、<感覚面、行為機能>)によりSI検査での行為機能に遅れが見られ、感覚面の偏り、構音の未熟さ、フォーマルな検査のバランスの悪さがみられた。<BR> さらに小児科医の療育相談(OT・ST評価)により全員が軽度発達障害とことばの遅れを併せ持つことが分かった。<BR> 構音の不明瞭さを主訴に病院を訪れる子どもの場合、理解面の明らかな遅れがみられず、構音のみが問題とされることが多い。ことばの評価に加えてOTによる運動面の評価を細かく行い、養育者に対してことばに影響を及ぼしている行動面についての説明を行った。総合的な評価を行う事でことばの不明瞭さの背景にある軽度発達障害の特性を捉えた療育をOTとSTが協同で行えたと考える。<BR>【まとめ】<BR> 1.ことばが主訴の子どもでもOTが行為機能を中心とした運動面の評価をすることで子ども全体の発達を捉え、構音の不明瞭さの背景にある軽度発達障害の特性を踏まえた支援をSTと協同で実践できた。<BR> 2.構音の不明瞭さをもつ子どもの支援はSTが窓口となるが、その背景に軽度発達障害を併せ持つ場合が多く、OTも評価に加わり、子どもと家族を総合的に支援することが大切であった。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205624785920
  • NII論文ID
    130006985008
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2007.0.41.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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