車椅子座位姿勢が上肢機能及び車椅子駆動能力に与える影響
-
- 大脇 為俊
- パールランド病院
書誌事項
- タイトル別名
-
- (一症例を通して)
説明
【目的】<BR> 標準型車椅子を使用して、常時長期間の日常生活を送ることの弊害は近年認識されてきている。今回、長期間標準型車椅子で入院生活を経過している一症例の不良姿勢に着目し、座位シーティング調整を行った場合の上肢機能の変化と車椅子駆動能力の変化を検討したので報告する。<BR>【症例紹介】<BR> 82歳、女性、H14.5.30.発症の脳梗塞後遺症、脳血管性認知症(HDS-R18/30 MMSE23/30)。障害名:左不全片麻痺(Br.stage 5-5-5)、左腰部痛(軽度)。利き手:左、ADLは全般に依存的であり(FIM60/126)自発的な要求は乏しい、起居・移乗は軽介助、端座位は監視、車椅子駆動は困難。標準型車椅子座位は、骨盤後傾、胸・腰部円背、左後側方に体幹が崩れ、自力で座位姿勢を修正することが困難。ROM上の大きな障害は無い。<BR>【方法】<BR> 1)簡易上肢機能検査(以下、STEFとする)を、標準型車椅子、椅子(足台調整)、肘掛け椅子(足台調整・腰部保持枕・左肘支持枕使用)の3設定で座位調整をして実施。(作業机は病棟使用の物とした) 2)モジュール型車椅子(レボ)を用いて最適な座位・駆動状態に調整し、STEF及び10m車椅子駆動速度(以下、10m駆動速度)を測定。 3)腹部体幹のstability向上を主目的とした訓練期間を設け3ヶ月後のSTEF・10m駆動速度を比較した。<BR>【結果】<BR>1)STEF得点は初期検査において、標準型車椅子:右68左8 椅子:右68左12 肘掛け椅子:右77左18<BR>2)モジュール型車椅子駆動姿勢調整では、当初左利き左片麻痺の患者に対して、右片手片足駆動を前提に調整したが、駆動時過剰な前傾姿勢となり上下肢の協調動作も困難であった為、足駆動型に変更した。両足駆動時も体幹前傾姿勢は見られたが、アームレストをつかむ事で体幹を支えある程度実用的な駆動が可能、10m駆動速度は30秒、STEF得点は右63左15。<BR>3)3ヶ月後のSTEF 椅子:右76 左24 モジュール型車椅子:右78 左26 10m駆動速度20.17秒 車椅子駆動時の過剰な体幹前傾は減少、椅子及び車椅子上において骨盤前傾及び体幹の抗重力伸展の自己調整が可能になっている。<BR>【考察】<BR> 今回の研究におけるSTEF得点の推移を見ると、座位支持基底面の安定性と骨盤前傾位保持及び体幹の支持性を高めた椅子座位シーティングを行うことにより、明らかにSTEF得点が向上しており、標準型車椅子での不良姿勢が症例の本来の上肢機能実現を阻害していたことが分かる。また車椅子駆動においても、腹部体幹筋の体幹支持能力向上に伴い体幹部を抗重力伸展位に保持出来るようになって駆動能力が向上しており、腹部筋が固定筋として働けるよう様なシーティングと訓練が結果として上下肢機能向上の要である事が示唆され、身体機能に応じた座位調整が困難で、不良座位姿勢を助長する標準型車椅子での長期生活自体が問題である事が確認できた。
収録刊行物
-
- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
-
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2008 (0), 23-23, 2008
九州理学療法士・作業療法士合同学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390001205624788224
-
- NII論文ID
- 130006985010
-
- ISSN
- 24238899
- 09152032
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可