脳血管障害者の主体的な生活にむけて

DOI
  • 東條 竜二
    医療法人敬親会豊島病院リハビリテーションセンター 作業療法士
  • 平名 章二
    医療法人敬親会豊島病院リハビリテーションセンター 理学療法士
  • 花山 友隆
    医療法人敬親会豊島病院リハビリテーションセンター 作業療法士

抄録

【はじめに】<BR> 昼夜逆転、抑うつ、臥床傾向にあったB氏を担当した。日常生活活動(以下ADL)に加え、作業を提示し、その中で興味を示した作業を用いて作業療法を展開した。その結果、生活リズムが確立し、B氏の生活に変化がみられたので経過を報告する。<BR>【B氏紹介】<BR> 80代女性。診断名:右被殻出血。H18年12月に意識障害、左片麻痺出現し、A病院に救急搬入され、血腫除去術施行。リハビリテーション目的にて、H19年1月に当院入院。同年2月に作業療法開始。生活歴:夫の介護をしながら、農作業や家事全般を行っていた。<BR>【初回評価】<BR> Br-stage: 左上下肢・手指2。感覚重度鈍麻。構音障害、嚥下障害あり。昼夜逆転・傾眠傾向にあり反応乏しい。コミュニケーションは主に筆談等で表出。高次脳機能面は、精査困難で観察より注意障害、保続、構成障害の疑いあり。基本動作:全て中等度~全介助。ADL:食事は経管栄養にて摂取。排泄は尿・便意あると言われるも訴えなし。その他ADLは中等度~全介助。日中臥床傾向。Barthel index(以下BI):5/100、機能的自立度評価法(以下FIM):31/126。Demand:家に帰りたいと泣きながら訴えるのみ。<BR>【介入方針】<BR> 障害後の生活環境の変化や抑うつ等の影響もあり、昼夜逆転・傾眠傾向が引き起こされたと考えた。そこで、ADLに加え、B氏が興味を示した作業を提供することで、生活リズムを確立し、主体的な病棟生活が送れることを方針とした。<BR>【経過】<BR> 第1期:ADLを用いて生活リズムに変化を与えた時期。食事は経口摂取及び、車椅子座位にて行うことで時間の概念が確立され、また尿・便意の訴えが可能となる。第2期:作業の導入により覚醒時間の拡大を図った時期。作業に対しB氏からの主体的な参加や要求が出現する。笑顔が増え、言語による表出が可能となる。第3期:作業活動の更なる展開が見られ始めた時期。同室者に興味を示したり、他者が行う作業に自ら興味を示し挑戦したり、作製中の作業を自ら病棟で行うなど、主体的な作業選択・遂行が可能となる。<BR>【現在の評価及び結果】<BR> 身体機能面は特に著明な変化ないが、車椅子上で生活することが多くなり、コミュニケーションも発話による疎通が増えた。高次脳機能面は明らかな問題を認めていない。基本動作は寝返り自立。ADLは、食事はスプーン使用にて自立、排泄はB氏の訴えのもと中等度介助にてトイレを使用。BI:30/100。FIM:54/126。Demand:身の回りのことができるようになりたい。肩こりなく仕事がしたい。家に帰りたい。<BR>【考察】<BR> 食事・排泄動作等のADLと共に、生活の中に楽しみや余暇となりうる作業を一緒にみつけ提供することは、作業療法の重要な役割の一つである。今回、昼夜逆転、抑うつ、臥床傾向にあったB氏の意志や意欲に働きかけたこと、またB氏が作業に興味や価値を示し、継続して行い、習慣化したことで新たな作業選択や作業遂行ができたことがこれらの結果に至ったと考える。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625003648
  • NII論文ID
    130006985199
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2007.0.151.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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