脳性まひ児のシーティングに関する検討

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抄録

【はじめに】<BR>我々が関わってきた脳性まひ児の座位保持装置のシーティングにおいては、上下肢のベルト固定による痙性の増悪、骨盤の前方すべりを股パッドで止めている等の問題が課題となっている。<BR>今回、座位保持装置にて、日常生活場面で支障が生じている脳性麻痺を伴う6症例にシーティングを行い、一定の成果を得たので報告する。<BR>【対象】<BR>対象は5~15才の脳性まひ児6症例。いずれも日常的に使用している座位保持装置において、常に顔が上方を向いている、骨盤の前方すべりを股パッドで止めている、下腿部をベルト固定するため下腿前面に傷ができる、手足をバタつかせて落ち着かない、座位保持装置に座らせても降りたがる等の問題を抱えている。<BR>【方法】<BR>今回のシーティングにおいて、2症例は工房により座面と背もたれを作製し、4症例はJAY fit back、JAY GSクッションを用いた。<BR>シーティングは、坐骨部前方に高さ20~35_mm_のアンカーサポートを用いた硬質の座面と股ベルトによって骨盤を安定させ、股関節内転に対してのみ股パッドを用いた。さらに、体幹は胸ベルトと硬質のラテラルサポートによって体幹の安定と側彎への対応を図った。<BR>【結果】<BR> 骨盤、体幹が安定することで、上下肢の痙性低下、体幹の低緊張に対する支持の向上が得られた。さらに、日常生活場面において、母の呼びかけに対して頚部回旋して追視した、股パッドや下腿ベルトが必要なくなった、ベルトによる傷がなくなった、頭を自力で起こすことがでた、声かけに反応するようになった、座位保持装置に座ることを嫌がらなくなった等の成果を得た。<BR>【考察】<BR>今回の6症例については、座面の改良(硬質の素材、アンカーサポートの高さ)と背もたれの改良(ラテラルサポート、硬質の素材)を行うことで、痙性の抑制や頚部の随意運動を引き出せた。これらの変化による最も大きな成果は、日常生活場面で生じていた様々な支障が改善したことである。<BR>今回行ったシーティングは一定の成果が得られた。今後、成長していく身体と起こりうる変形に対して、今回の取り組み以外の方法も含めて継続して検討し、経過を追って対応していきたい。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625271808
  • NII論文ID
    130006985446
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2010.0.270.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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