慢性閉塞性肺疾患患者に対して作業活動を導入した一症例

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  • ~呼吸困難感・心理面に着目して~

抄録

【はじめに】<BR>慢性閉塞性肺疾患(以下COPD)患者は,26~74%にうつ傾向が認められ,不安症状は96%に認められたという報告もある.これらの精神状態はリハ導入・進行に対する拒否等の悪影響を及ぼす.またGOLDの分類ではCOPDによる不安・抑うつの軽減はエビデンスAともなっている.今回リハに不安・拒否がみられたCOPD患者に対し,導入時に趣味活動を用い,人工呼吸器離脱訓練まで至ったので症例同意の下,以下に報告する.<BR>【症例紹介】<BR>70歳代男性.在宅酸素療法を行っていたが,平成21年8月末より呼吸困難感,全身浮腫により受診し,胸水貯留,呼吸状態悪化,急性腎不全の診断にて,A病院へ転院した.挿管後,人工呼吸器装着し,持続的血液透析濾過療法を2ヶ月間実施後,症状改善しリハビリ目的にて当院へ入院となる.<BR>【作業療法介入時】<BR>人工呼吸器設定はSIMV+PSモード.血液ガスはPaO2:78mmHg,Paco2:59mmHg,SpO2:98%であった.意思疎通は筆談にて可能.Barthel Index(以下B.I.):0点,起居動作は軽介助レベルであった.端座位保持は15分程で修正Borg Scale:4~5であり,呼吸困難感の訴えが強かった.訓練中は呼吸困難感への不安が強く,「きつい」「苦しい」と拒否的な訴えが多かった.自己評価式抑うつ尺度(以下SDS)は拒否により行えなかった.<BR>【方法と経過】<BR>主治医より人工呼吸器離脱訓練の指示があったが,呼吸困難感の不安が強く,拒否的であったため,OTではその軽減目的にて,人工呼吸器装着により, ベッド上端座位にて趣味活動である将棋を開始した.介入当初はSpO2:96~98%であったが,修正Borg Scale:6であり,呼吸困難感の訴えが多かった.介入1カ月後には呼吸困難感・不安がなくなり,修正Borg Scale:0~1と改善がみられた.また訓練は,120分まで可能となり,O2:2l使用にてon-offでの人工呼吸器離脱訓練を開始するまでとなった.SDSは軽度うつ状態ではあったが,on-off訓練開始1ヶ月後には日中offの時間が増え,B.I.が50点となった.<BR>【考察】<BR>日本呼吸管理学会/日本呼吸器学会ではリハビリの適応症例に患者自身の積極的な意思があることを確認することと推奨されており,また呼吸困難感には抑うつ・不安等の心理的因子が強く関与することが従来から知られている.本症例は,呼吸困難に対する不安が強く,リハビリに対し拒否的であった.導入時に趣味活動を用いることで,楽しみつつ活動を行え,活動に注意が向いた.それらが,呼吸困難感の軽減に繋がり,成功体験や達成体験になったと考える.そして自己効力感を高め,拒否があった人工呼吸器離脱訓練や機能訓練も行え,不活動等の悪循環を断つことができ,身体機能向上に繋がったと考える.呼吸リハは,意欲に影響されると言われているが,心理的アプローチに着目した報告等は少なく,今後も検討を重ねていく必要性があると考える.

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625296384
  • NII論文ID
    130006985480
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2010.0.359.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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