腰部脊柱管狭窄症に対し腰椎後方椎体間固定術施行後、股関節痛が出現した症例の検討

DOI
  • 中野 吉英
    社会医療法人財団池友会 福岡和白病院リハビリテーション科
  • 井元 淳
    社会医療法人財団池友会 福岡和白病院リハビリテーション科
  • 高宮 尚美
    社会医療法人財団池友会 福岡和白病院リハビリテーション科
  • 甲斐 尚仁
    社会医療法人財団池友会 福岡和白病院リハビリテーション科

抄録

【はじめに】<BR>今回、腰部脊柱管狭窄症(L4/5、L4/5 conjoint nerve)と腰椎すべり症(L4/5)に対し腰椎後方椎体間固定術(PLIF)を施行し、術後消失した下肢痛が再度出現した症例を経験した。再度出現した疼痛の発生起序について検討したのでここに報告する。<BR>【症例紹介】<BR>60歳代女性。H15年頃より腰痛が出現した。H19年頃より右下肢痛が出現。H21年当院受診し、MRIにて腰部脊柱管狭窄症・腰椎すべり症(L4/5)と診断される。翌月、PLIF施行される。<BR>【説明と同意】<BR>発表に先立ち本症例に十分説明を行い、紙面にて同意を得た。<BR>【経過及び評価】<BR>術前は歩行時に腰背部、左膝関節部、また右殿部から足底にかけての疼痛があった。表在感覚は右殿部から足底にかけて中等度鈍麻であった。膝蓋腱反射は左右とも正常、アキレス腱反射は左右とも消失していた。立位姿勢は腰椎前彎、骨盤前傾・軽度右挙上位を呈していた。徒手筋力検査では右股関節外転4、右足趾伸展3の筋力低下を認めていた。術後2日目より硬性コルセットをつけての座位、歩行が許可され、術後3日目より理学療法が開始となった。この時点での評価は、右下肢痛は消失し、新たに術創部痛が出現していた。表在感覚は右鼡径部、右大腿外側から前面にかけてと右母趾に軽度鈍麻があった。立位姿勢では、腰椎前彎、骨盤前傾が軽減していた。腱反射、筋力については術前と変化はなかった。術後6日目から11日目にかけて「右股関節に違和感ある」、「右脚がだるくて眠れない」などの訴えがあり、右鼡径部・大腿部の歩行時痛と夜間痛が出現した。術後13日目に右股関節臼蓋形成不全・変形性股関節症と診断された。術後14日目、独歩にて自宅退院された。<BR>【考察】<BR>臼蓋形成不全患者は疼痛回避のため、大腿骨頭に対する臼蓋の被覆率を高めようとし、腰椎前彎・骨盤前傾姿勢を呈することはよく知られている。本症例も臼蓋形成不全により同姿勢を取るようになったため、腰椎の剪断力が高まり、腰椎すべり症を発症したと考えられた。<BR>下肢と腰椎の運動連鎖を考えれば、腰部脊柱管狭窄症・腰椎すべり症患者の股関節評価は見落とせない部分である。術前評価では、腰部神経症状と変形性股関節症による関節症状を判別するのは困難であった。しかし、前述した下肢と腰椎の運動連鎖や本症例での特徴的な立位アライメントを考慮しつつ、股関節のエンドフィールの精査ができていれば関節症状を予測できた可能性もある。<BR>本症例では、術後原因不明の疼痛が再び出現したため、手術に対する不安が増したのではないかと考えられる。入院中、患者の身体に触れる機会が多い理学療法士がより早期に異変に気付き、医師と情報交換ができれば不安軽減に繋がったのではないかと考えられる。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390001205625423872
  • NII論文ID
    130006985634
  • DOI
    10.11496/kyushuptot.2010.0.377.0
  • ISSN
    24238899
    09152032
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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