脊椎圧迫骨折による痛みに関する調査
書誌事項
- タイトル別名
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- ~動作時痛と椎体圧潰に着目して~
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説明
【目的】<BR> 一般的に、脊椎圧迫骨折(VCF)に伴う痛みは、起き上がりや立ち上がり時に出現し、歩行時には消失することが多いとされている。また、VCFの保存療法において、椎体圧潰の進行予防は各動作時痛の残存を避けるためにも重要な課題のひとつと考えられるが、椎体圧潰が進行しているにも関わらず痛みの訴えがないケースも存在し、必ずしも椎体圧潰の進行が動作時痛を残存させるとは言えない。しかしながら、以上のようなVCFに伴う各動作時痛の発生状況、ならびに椎体圧潰の進行程度との関係について検討した先行研究は非常に少なく、基礎的なデータにかけているのが現状である。そこで今回、最も発生頻度が高いとされる胸腰椎移行部のVCF患者を対象に動作時痛と椎体圧潰の進行について調査した。<BR>【方法】<BR> 対象は、当院回復期病棟に入棟し、保存療法を実施した胸腰椎移行部のVCF患者24名(平均年齢77.8歳)とした。調査項目は、1)安静時痛、ならびに起き上がり・立ち上がり・歩行時(動作時)痛の有無(有痛者率)、2)安静時痛、動作時痛のVAS、3)圧潰率、4)圧潰進行率とした。なお、圧潰率は退棟時の骨折椎体の後縁(P)に対する前縁(A)の比とし、圧潰進行率は入棟時のA/Pと退棟時のA/Pの差を入棟時のA/Pで除し算出した。分析にあたっては、入棟時と退棟時における有痛者率とVASを各動作で比較した。また、圧潰率と圧潰進行率については退棟時の各動作別に痛みあり(有痛)群と痛み無し(無痛)群で比較した。すべての統計学的手法とも有意水準は5%とした。なお、本調査は当院が定める個人情報取り扱い指針に基づき実施した。<BR>【結果】<BR> 入棟時の各動作の有痛者率は、安静時と立ち上がり時に比べ、起き上がり時が有意に高値を示したが、退棟時では各動作間に有意差は認められなかった。次に入棟時のVASは安静時と歩行時に比べ起き上がり時が有意に高値を示したが、退棟時のVASは各動作間に有意差は認められなかった。各動作における圧潰率と圧潰進行率は有痛群と無痛群の間に有意差は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 入棟時の有痛者率とVASの結果から、起き上がり時の痛みの訴えが最も多く、その程度も強いことが認められた。これは、起き上がり動作が体幹の屈曲と回旋を伴う運動であり、他の動作に比べ胸腰椎移行部の大きな動きが求められるためと思われる。また、退棟時の有痛者率とVASが各動作間で大差なかったことを合わせて考えると、起き上がり時の痛みはVCFの早期に特徴的な痛みであり、骨折部の治癒とともに消失していくものと考えられる。次に、圧潰率と圧潰進行率の結果から、少なくとも退棟時の時点では、各動作痛の発生に椎体圧潰の程度や進行度合いは影響しないことが示唆された。ただ、VCF後に椎体圧潰が進行するとともに骨癒合が遷延し、最終的に偽関節となって痛みが慢性化するケースがあるとの報告もあり、今後はこの点に関しても検討する必要がある。
収録刊行物
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- 九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 2011 (0), 126-126, 2011
九州理学療法士・作業療法士合同学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390001205625491584
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- NII論文ID
- 130006985678
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- ISSN
- 24238899
- 09152032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可